2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞周期を考慮した放射線被ばく影響の動態モデル解析
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16K09007
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
伊達 広行 北海道大学, 保健科学研究院, 教授 (10197600)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 恒平 北海道科学大学, 保健医療学部, 准教授 (20736376)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 線量率効果 / 標的・非標的効果 / 細胞周期依存性 / 再酸素化 / 細胞生存率モデル / モデルパラメータの不確定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、線量率や照射方法(連続あるいは分割)の異なる放射線照射における細胞応答を解析するモデルを開発し、細胞実験(X線照射後のコロニー形成能の評価や核内DNAの染色による細胞周期解析)をもとに、各条件での被ばく時の放射線感受性と致死率の同定を行うことを目的としている。平成28年度は、主として以下の2つに焦点を当てて遂行した。 (Ⅰ)線量率や連続・分割照射を変えた種々の条件におけるX線照射細胞について、細胞周期をフローサイトメーターにより定量化し放射線感受性との関係を調べる。また、免疫抗体蛍光染色法により、蛍光顕微鏡を用いて細胞核内のDNA損傷(DSB)数の観測を行う。 (Ⅱ)Microdosimetric-kinetic(MK)モデルを照射条件に適合するよう改訂し、必要なパラメータを決定する。 前者では、低線量率連続照射を模擬する実験室での分割照射法によって、長時間(~12h)照射中のCHO-K1細胞の各相(G0/G1,S,G2/M)にある細胞数割合を同定した。これにより、線量率に依存したG2相の集積が放射線高感受性に関わりを持つことを確認した。一方後者では、細胞周期に伴うDNA量の変化をMKモデルに組込み、各種パラメータをもとに細胞生存率を求め、実測データと比較した。その結果、DNA量の変化を考慮することによって、実測値とより一致度よく細胞生存率を再現できることが明らかとなった。 これらの成果等に関し、英文の学術誌に3編が受理(うち1件が既に掲載)された他、国内学会で19件、国際学会で10件の成果報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
英文誌にて3編(うち1編は、研究代表者らが主催する放射線影響に関する国際シンポジウムの開催報告)を英文誌に投稿し受理されている。また、国内学会で19件、国際学会で10件の成果報告を行った。さらに、次年度以降に予定していた課題にも取り組み、放射線の標的・非標的効果を取り入れたモデルの解析を行い、その結果をまとめた1編を英文誌に投稿して査読結果を待っている状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、MKモデルにさらなるいくつかの効果(細胞の再酸素化、DNA修復能の違いの効果、細胞の再増殖、等)を組み入れて、統合的なモデル(IMKモデル)を構築し、異なる細胞株や照射条件での解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
物品費での支出の大部分が消耗品であり、当初の予定よりも大幅に低い額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入もしくは旅費の一部として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)