2017 Fiscal Year Research-status Report
BNCTに関連した患者体内ホウ素濃度分布の非侵襲的計測機器の開発
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16K09010
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
安岡 聖 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50200499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊田 博明 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30354913)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | BNCT / γ線検出器 / ホウ素濃度 / LaBr3 / 結晶シンチレータ / ホウ素線量 / 即発γ線 |
Outline of Annual Research Achievements |
微弱な信号を高レートのバックグラウンドから区別するには、正しいバックグラウンドの計測とその理解が最も重要な課題の一つである。本研究では、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)において、患者体内の微量のホウ素濃度を照射場の熱中性子線との反応で発生する478 keVの即発γ線の計測数率を熱中性子線と水との反応で発生する2221 keV即発γ線の計測数率との比(計測数率比R)を測定することで計測し、リアルタイムで患者体内のホウ素濃度とそれに関連して得られるホウ素線量と治療照射時間の高精度な決定を目的としている。予測される患者体内のホウ素濃度は約30 ppmと極めて微量で、この極めて困難な課題を解決するには、如何に高レートの熱中性子線とγ線のバックグラウンドを計測して理解し、軽減することが重要である。そのために、当該年度では、単チャンネルγ線検出器を用いて、照射室内の中性子線及びγ線のバックグラウンド調査を詳細に行った。その結果、(1)検出器をビームラインに対して90度方向に設置するのが最もγ線バックグラウンドの計測数率を低減する、(2)照射口直下流に被照射体を設置した場合、被照射体から検出器までの間を鉛のブロックでトンネル(コリメータ)状に遮蔽する、所謂、テレスコープ型の遮蔽が最もγ線バックグラウンドの計測数率を低減する、(3)これらのバックグラウンド対策により、高レートのγ線が重なり合う現象(パイルアップ現象)は解消し、γ線のエネルギー計測によるスペクトル解析が可能な状態を実現した、(4)計測したγ線のエネルギースペクトラム中に、目的の2つの即発γ線(478 kevと2221 keV)と近接γ線(511 keV)の3種類の特別γ線を検出した。 以上の結果から、平成30年度において、更なる中性子線遮蔽体の増強と共に、被照射体内ホウ素濃度と計測数率比Rの関係を測定するための準備ができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実施計画で示したいばらき中性子医学研究センター(茨城県東海村)のBNCT治療用中性子ビームラインを用いた本γ線検出器に対するビーム試験は、加速器側の中性子ビームラインの調整が大幅に遅延し、平成29年9月まで実施できなかった。加速器からの陽子線出射ビーム強度はほぼ安定して、1時間以内にBNCT治療が可能な熱中性子線束が得られるようになった。ビーム試験は平成29年10月より開始され、平成30年3月現在、計5回実施した。開発した2種類(単チャンネルと複チャンエル)のγ線検出器のうち、単チャンネルγ線検出器を用いて、照射室内の中性子及びγ線のバックグラウンド調査を詳細に行った。照射室内の極めて高い中性子線とγ線の発生率のため、照射口から約1.1 mに設置したγ線検出器からの信号は複数重なり合い(パイルアップ)、正確なγ線エネルギーの計測は困難な状態であった。しかし、検出器の設置位置、向かう方向の最適化、鉛ブロックによるγ線遮蔽、LiFブロックによる中性子線遮蔽、に対し改善を加え、現在ではパイルアップ現象は解消し、γ線のエネルギー計測によるスペクトル解析が可能な状態を実現している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度のビーム試験において、照射室内の中性子線及びγ線のバックグラウンド調査を詳細に行い、被照射体内ホウ素濃度と計測数率比Rの関係を測定するための準備ができた。平成30年度も同様に、いばらき中性子医学研究センター(茨城県東海村)のBNCT治療用中性子ビームラインを用いて、単チャンネル型に加えて多チャンネル型γ線検出器に対するビーム試験を本格化させ、ホウ素濃度およびホウ素濃度分布の測定器としての性能(エネルギー分解能、γ線弁別能力、ホウ素濃度誤差等)評価を行う。更に、検出器の放射化に関するデータ収集と解析により、信号が含まれる即発γ線とバックグラウンドになる遅延γ線の弁別能力の評価を行う。更に、これまでのビーム試験の結果とPHITSによるシミュレーションの結果を比較、評価をし、今後の更なる改善項目について検討を加える。
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Causes of Carryover |
(理由)いばらき中性子医学研究センター(茨城県東海村)のBNCT治療用中性子ビームラインのビーム調整がイオン源不良のためビーム利用時期が10月以降に遅延し、平成29年度中に予定していたγ線検出器ビーム試験の開始も10月以降に遅延した。そのため、十分なビーム試験データとその解析結果に依存する装置の改造およびバックグラウンド対策に伴う助成金の使用ができなかった。
(使用計画)平成30年4月現在、いばらき中性子医学研究センター(茨城県東海村)のBNCT治療用中性子ビームラインの利用が可能になったため、単チャンネル型に加えて多チャンネル型γ線検出器に対するビーム試験を本格化させ、ホウ素濃度およびホウ素濃度分布の測定器としての性能(エネルギー分解能、γ線弁別能力、ホウ素濃度誤差等)評価を行うために、(1)いばらき中性子医療研究センター出張、(2)中性子遮蔽用LiFブロックの増強、(3)検出器の校正のためのファンクション・ジェネレータ、(4)マルチアノード型γ線検出器の時定数の改造、(5)PG-SPECT検出器専用架台の製作、(6)国際学会発表のための外国出張、等に使用する計画である。
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