2017 Fiscal Year Research-status Report
正常者のMRI大脳白質所見に影響を及ぼす健康阻害因子に関する研究
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16K09064
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
荒井 孝子 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (90405580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 明美 静岡県立大学, 看護学部, 助教 (20721533)
武田 英孝 国際医療福祉大学, 臨床医学研究センター, 教授 (70245489)
池田 俊也 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (90193200)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脳ドック / 大脳白質病変 / 高血圧 / LDL |
Outline of Annual Research Achievements |
平成21年10月13日から平成27年4月30日の期間に行われたA健診施設脳ドッグ10,812例のうち、複数回受診しているケース1,573例を対象として抽出し検討した。初回受診時にDSWMH グレードが0であるものをDSWMH発生なし群、2回目受診時にDSWMHグレードが1以上になっている者をDSWMH発生あり群とし、2群間で年齢、性別、BMI、収縮期血圧、拡張期血圧、HbA1c、空腹時血糖、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、non HDLコレステロール、eGFR、尿酸、尿蛋白、喫煙歴・メタボリックシンドローム・糖尿病・慢性腎臓病・高血圧症・脂質異常症・高尿酸血症の有無との関連・影響を検討した。DSWMH発生なし群とDSWMH発生あり群における各因子を比較して、BMI、収縮期血圧、総コレステロール、LDLコレステロール、non HDLコレステロールに有意差が見られ、平均値はいずれもDSWMH出現群の方が高値であった。DSWMH発生に影響する因子を分析し、LDLコレステロールが選択された。 一方、連続10,812例のうち連続4,611例を対象とし、1回目受診時にDSWMH グレード0の群、グレードが1-4である群の2群間でも検討した。DSWMH発生に影響する因子として、糖尿病、腎・尿路系疾患、高血圧症、脂質異常、non-HDLコレステロール、eGFRが選択され、eGFRが60mL/min/1.73m2未満のものは、60以上に比べてDSWMHの発生割合が高く、グレード2,3,4の割合も高かった。 今回の経時的検討から、DSWMH発生にLDLコレステロール、腎機能の低下との関連が見られた。したがってLDLコレステロールおよびeGFRを適切に管理することは、DSWMH発生を予防する意味でも重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成21年4月~平成27年3月までの人間ドック時に脳ドックを受診した者10,812例のうち、参照できた8,097例までの画像解析が進んでいる。平成29年度は、特に脳ドックの複数回受診者の経時的な推移に着目し分析を進めた。これまでに結果において、受診者の年齢、血圧、既往歴、生活習慣が関連することを示唆するための十分なデータが得られている。この2年間の研究結果をまとめると、平成28年度には、白質病変の分類でグレード3,4という白質病変の癒合の始まりの検討で、年齢、高血圧の因子が極めて強いことが2項ロジスティックで明らかにされた。同時に、またメタボリック症候群の存在も病変に関係することが明らかにされた。平成29年度の研究では、グレードが病変なしの0から1,2,3,4と進展する過程を多項ロジスティック解析して、高血圧、脂質異常症という既往歴、LDLコレステロールが関与しており、またeGFRからみた腎機能低下の因子が関連していることが明らかになってきた。これらの研究結果は今年度の研究結果を2018年8月の日本人間ドック学会総会に発表する予定である。また、白質病変の出現を数値の面からも検討して、やはり高血圧の因子が強いことが明らかになった。また、白質病変の平均出現数から見て、年齢と共にどのように増加していくかを明らかにすると共に、この結果については今年3月の日本脳卒中学会総会で発表した。 この2年間の研究を通し、研究代表者および共同研究者や連携研究者と話し合いながら研究を進められる環境も整ってきている。MRI画像分析には時間と判断力が必要であり、2年目までの研究の進捗状況としては順調である。データの解析も順調に進み、有意な研究結果が得られてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本研究の最終年度として、平成28年度からの画像解析データの分析を継続してさらに研究を進展させ、最終年度として研究をまとめることが重要である。当初の予定通り、解析の対象のうち、毎年あるいは数年の間隔で繰り返し脳ドックを受診している2,000例近くの複数受診例を追加抽出して、経年的に白質所見がどのように変化してその程度が進展していくかを同一例の検討で明らかにする。 また、大脳白質病異変がLDLコレステロールを含めた脂質異常症との関連が示唆されていることをふまえると、頸部動脈エコーの画像所見の分析を進める必要がある。大脳白質病変は、細動脈硬化の起きる穿通枝動脈領域であり、これが脳梗塞を初めとする脳病変に影響する。アテローム硬化(粥状動脈硬化)が起きる総頸動脈、頸動脈分岐部から内頸動脈の起始部におけるプラークの形成や程度、その場所での動脈硬化出現の有無、程度すなわち狭窄率を測定評価し、頸動脈病変と関係の有無などについても研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者は、平成29年度に交付された研究費について研究分担者に対して分担金を配分した。分担研究者の研究進行状況に合わせ、平成30年度分担金と合算して使用する意向を持っており、結果として、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 平成30年度に行う学会発表における旅費の支出および研究を遂行するにあたっての少額備品等を購入予定である。
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