2016 Fiscal Year Research-status Report
北インドにおける胆嚢がん多発要因の疫学的解明と早期発見のための特異蛋白の有用性
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16K09080
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
生駒 俊和 北陸大学, 医療保健学部, 准教授 (60612744)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 和男 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (60176790)
土屋 康雄 新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60334679)
浅井 孝夫 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 助教 (60612736)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 胆嚢がん / 疫学成因解明研究 / 環境要因 / 遺伝要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の計画は、インド研究者との研究打ち合わせ後、症例-対照研究のための質問書の配布と回収、DNA抽出のための血液試料採取、発がん要因解明のための遺伝子変異解析、インド産赤唐辛子中のカビ毒分析であった。 平成28年10月にインドを訪問し、インド研究者と打ち合わせを行った。その時までに採取できた質問書、DNA抽出のための血液試料は20例程度であった。TP53とK-ras遺伝子変異解析のためのホルマリン固定パラフィン包埋組織標本も数例入手でき、帰国後に解析を始めた。しかし、当初目標とした試料数(がん患者50~100例、胆石症患者50~100例)には到達できなかったので、その後も引き続き採取の継続を依頼した。 赤唐辛子中のカビ毒分析は、インドの胆嚢がん多発地域(北部)で8試料、中等度発地域(中部)で5試料、低発地域(南部)で8試料の計21試料を入手し、試料中のアフラトキシン類とオクラトキシンA濃度をHPLC法により測定した。アフラトキシンB1濃度は、北部12.0±11.9 μg/kg、南部10.8±10.3 μg/kg、中部2.5±2.3 μg/kgの順に高かった。総アフラトキシン濃度は、北部13.1±12.6 μg/kg、南部11.6±10.8 μg/kg、中部2.9±2.4 μg/kgの順に高かった。さらに、オクラトキシンA 濃度は、中部134.2±267.2 μg/kg、南部29.0±24.1 μg/kg、北部20.4±20.4 μg/kgの順に高かった。しかし、北部。中部、南部間の値にはいずれの項目にも有意差は認められなかった。インドでは赤唐辛子中のマイコトキシン濃度と胆嚢がん発症との地域相関は認められなかった。今後、ヒトを対象として血清アフラトキシンB1濃度と胆嚢がん発症との関係を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の予定は、インド研究者との研究打ち合わせ後、症例-対照研究のための質問書の配布、回収とDNA抽出のための血液試料の採取を行う。さらに、発がん要因解明のための遺伝子変異解析と赤唐辛子中のカビ毒分析を行うことであった。 インド研究者との打ち合わせは、本研究課題が採択された後メールにて適宜行い、平成28年10月にインド訪問時に試料採取方法などの最終確認を行った。予定していた質問書の配布・回収や試料採取も開始できた。さらに、発がん要因解明のためのホルマリン固定パラフィン包埋組織標本も入手できた。しかし、平成28年10月までの約6か月間で、目標としていた数の質問書、血液、及び組織標本の採取は不可能であった。しかし、これらの質問書、試料の採取はその後も引き続き継続を依頼しており、平成29年度9月のインド訪問時までには目標数の質問書、試料を受け取れることになっている。 平成28年度中に完結できた研究はインド産赤唐辛子中のアフラトキシン類とオクラトキシンA のカビ毒分析であった。赤唐辛子中のカビ毒濃度と胆嚢がん発症頻度(多発、中等度発、低発)との関りを調べた地域相関研究の成果は学術論文としてまとめて投稿し、年度内に受理、出版された(Ikoma T, et al. Asian Pacific Journal of Cancer Prevention, 2016, 17, 3499-3503)。 以上の結果から、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の課題は、症例-対象研究により胆嚢がん発症に関わる環境要因と遺伝要因の解明を行うことである。平成29年9月にインドを訪問し、収集、採取を依頼していた質問書や試料を受け取り、日本に持ち込んだ後、解析を予定している。 環境要因は、性と年齢を調整した胆嚢がん患者(case)と胆石症患者(control)から得られた質問書のデータをコンピュータ入力し、統計解析を行い、両者間の差を明らかにする予定である。 遺伝要因は、両患者の血液から抽出したDNAを用いて、次の遺伝子多型の分析を行う予定である。日本、チリ、ハンガリー、ボリビア患者を対象として実施した薬物代謝・解毒、細胞周期の制御に関する遺伝子多型(CYP1A1 rs4646903多型、CYP1A1 rs1048943多型、GSTM1多型、GSTT1多型、TP53 rs1042522多型)、チリ胆嚢がん患者に有意差が認められた胆石形成に関する遺伝子多型(Apo B rs693多型やCETP rs708272多型)などの解析を予定している。一方、平成28年度中に完了できなかった課題、パラフィン包埋組織標本を試料としたTP53とK-ras遺伝子変異の解析を実施し、内因性か外因性か、もしくは内因性と外因性の両者が本症発生と関係しているかを明らかにする予定である。 平成30年度には、バイオマーカー候補として先のチリ胆嚢がん患者を対象とした研究で得られた8種類のタンパク質の有用性評価と絞り込みを行う。免疫染色による有用性評価によって絞り込んだ1~3種類のタンパク質の血清中濃度の測定を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成28年度の直接経費のうち、9万円が次年度使用額となり繰り越しとなった。これは、目標とした数のパラフィン包埋胆嚢組織標本が採取できなかったことからTP53 、K-ras遺伝子変異解析が平成28年度中に完了せず、次年度への繰り越しとなったことによるものである。平成29年度中には目標とした試料数を確保できる予定であることから29年度内に執行する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度内に、TP53 、K-ras遺伝子変異の解析費用として使用する予定である。
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