2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ワクチン開発に向けた肺炎球菌の血清型、薬剤耐性および表層抗原の分子疫学的研究
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16K09101
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
川口谷 充代 札幌医科大学, 医学部, 助教 (70733062)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 宣道 札幌医科大学, 医学部, 教授 (80186759)
漆原 範子 札幌医科大学, 医学部, 講師 (80396308)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 分子疫学 / ワクチン / 血清型 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦で定期接種として使用されている肺炎球菌ワクチンには、小児に対する結合型ワクチン(PCV13)と高齢者に対する莢膜多糖体ワクチン(PPSV23)があるが、ワクチンに含まれない血清型による肺炎球菌感染症の増加に伴うワクチンカバー率の低下が懸念されている。この現象は世界的な問題でもあり、現行のワクチンに使用されている莢膜多糖体(CPS)に依存しないワクチンの開発が望まれている。新規ワクチンの抗原には多種の表層蛋白が候補に挙げられており、本研究では、その1つであるPneumococcal surface protein A (PspA)を分子疫学的手法で解析し、各血清型における薬剤耐性の状況を明らかにするとともに、新規肺炎球菌ワクチン開発に向けた知見を得ること目的としている。本年度はまず、前年度に終えた非PCV13血清型菌株における薬剤感受性とペニシリン遺伝子変異の解析に、増加しつつある血清型15型の亜型15A/Fを決定するための新規血清型鑑別法の確立を加え、これらをまとめ国際誌上で報告した。本研究で用いる非侵襲性肺炎球菌臨床分離株(小児・成人由来)は、2016年5月から11月に北海道各地の医療機関から分離収集され、そのうち小児由来678株の血清型をmultiplex PCR法と血清型群6と15の亜型を我々が考案した血清型鑑別法を用いて分類した。結果、PCV13に含まれる血清型は60.3%(2011年のPCV13導入前の我々の調査)から12.1%に減少し、これに伴いPCV13に含まれない血清型が全体の約9割(87.9%)を占めていた。同定された血清型は多い順に、15A (14.5%)、35B (11.8%)、15C (9.3%)、23A (9.0%)、10A、15B、11A、34型で、これらはすべて非PCV13血清型であり、血清型の置換が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は臨床分離株の分与を受けたと同時に解析が進行しており、血清型15型の亜型15A/Fを決定するための新規血清型鑑別法を確立し報告することもできた。その他にも、侵襲性感染症由来の肺炎球菌臨床分離株から本邦ではまだ報告のない血清型23Bを同定し、PspA (Family 1, clade 1)含むPspC (Group 4), Ply, PavA, PhtA, PhtB, PhtE, NanA, NanB, PcpAといった多種の表層蛋白の保有を確認し、国際誌上で報告した。 以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度解析した小児由来株については、MICの測定による薬剤感受性試験薬、薬剤耐性遺伝子の検出、PspA Family のclade-defining region の塩基配列をdirect DNA sequencing法で解析し、系統解析を行う。これらの解析結果を含め、分子遺伝学的特徴を詳細に調査していく予定である。加えて現在、札幌医科大学附属病院より肺炎球菌臨床分離株の分与を受けており、これら菌株についても血清型の同定、薬剤感受性試験等を含めた分子疫学的解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画およびその進行に合わせて適切に使用させていただいた中で、若干の次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度分の未使用額は次年度の研究費に合わせ、遺伝子解析に必要な試薬や消耗品の購入、及び得られた知見を発表するのための関連費用に充て有効に活用する。
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Research Products
(6 results)