2017 Fiscal Year Research-status Report
地域特異性を示す病原性抗酸菌の感染源及び感染様式の実態解明
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16K09120
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Research Institution | Clinical Research Center, National Hospital Organization, Kinki-Chuo Chest Medical Center |
Principal Investigator |
吉田 志緒美 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), その他部局等, 感染症研究部 流動研究員 (40260806)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
露口 一成 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), 臨床研究センター, 感染症研究部長 (00359308)
田丸 亜貴 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (70270767)
西内 由紀子 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (00333526)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 非結核性抗酸菌 / M. avium / M. kansasii / M. marinum |
Outline of Annual Research Achievements |
課題研究の主な実績は以下のとおりである。 1、河川水に棲息するNTMの菌種分布:石川採水を年2回(夏季、冬季)実施し、採水3地点からのDNA現存量を検討した。培養が困難なNTMを含むすべてのNTMのDNA量(atpE遺伝子コピー数)を捕捉するためにステリベックスを用いたDNA抽出法を検討したところ、2段階濾過法を用いなくてもDNAを回収することができた。したがって、今後はDNA現存量の検討にプレろ過を省略することで、より実態を反映したDNA現存量を明らかにできると考える。また、これらのサンプルから計192株のNTMを検出しサンガーシークエンス法によりrpoB遺伝子配列を決定、BLAST検索により菌種同定を行った。192株の内、昨年度検出されなかった肺MAC症の起炎菌の一つであるM. avium subsp. hominissuisが分離された。また、M. intracellulareやM. arupenseについては昨年度と同様に検出されたが、今年度はM. shigaenseやM. yongonenseも検出された。M. shigaenseは琵琶湖周辺に居住地を持つ皮膚肉芽腫症の患者の病変部から分離された比較的新しい抗酸菌種であるが、琵琶湖を源泉とする大阪北摂地域の淀川河川水サンプルから高頻度に分離されており、今回大阪南部に位置する大和川を源泉とした石川河川水から分離されたことはNTMの環境浸淫状況を推察する上で示唆に富む結果である。
2、動物NTM症からの抗酸菌種分離:昨年度に引き続いて動物NTM症から分離されるNTMの遺伝子解析を実施し、野生下での捕獲爬虫類からのM. marinum、飼育ネコからのMycobacterium sp. B10-07.09.0206の分離に成功した。M. marinum症については学会報告を行い、NTM症ネットワーク構築の進展に寄与した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養が困難なNTMを捕捉する可能なステリベックスを用いた1段階濾過法は効率よくDNAを抽出できる方法であることを明らかにした。したがって、今後の高率的なDNA回収が期待できると考える。また、昨年度の河川水調査では20種類の抗酸菌属の分離であったが、今年度は33菌種が確認でき、環境におけるNTM種の多様な分布状況が明らかになった。 本研究では、NTMの実態が不明な河川において、その多様性と現存量を明らかにする基礎的なデータを得ることができたことから、引き続き、河川の特徴づけを行い監視することで、感染対策や水資源保護へ繋がる有効な対策方法を検討・提案することが可能になると思われる。 当初目標としていた環境及び動物種からのM. kansasiiの分離およびDNA回収は未だ果たせていない。一方、M. kansasii以外のNTMに罹患した飼育動物由来のNTM分離やMAHによる過敏性肺臓炎症患者の浴室環境から同菌種を回収し、学会及び論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
M. kansasiiやMAHをはじめとする抗酸菌はヒトに対して肺感染症を引き起こすが、病原体についてのゲノム情報が不足しており、NTM症の効果的な治療方法は確立されていない。一方、NTMは環境に広く浸淫し、MAHはヒトと同様に様々な動物種に感染していると考えられている。動物感染症の報告は稀であるため、MAHの感染状況はよくわかっていないが、今後引き続き、NTMの動物感染症の事例の収集と環境河川サンプル調査を続行しより詳細なNTM分布と遺伝系統分析を行う予定である。NTMの多様な宿主や地域への適応を明らかにするためにも、NTM調査を積極的に行い、わが国及び世界に分布するNTM集団の進化的な位置付けを明確にする。
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Causes of Carryover |
当初予定していた英文校正の回数が少なくなったため、平成29年度の研究費に未使用額が生じたが、平成30年度に行う予定の研究計画と併せて実施する。また、研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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Research Products
(9 results)