2017 Fiscal Year Research-status Report
レギュラトリーサイエンスの認知とリスクコミュニケーションギャップに関する研究
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16K09130
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Research Institution | Shubun University |
Principal Investigator |
吉田 佳督 修文大学, 看護学部, 教授 (90506635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
磯貝 恵美子 東北大学, 農学研究科, 教授 (80113570) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リスクコミュニケーション / 放射線影響 / レギュラトリーサイエンス / 医療・福祉 / 社会医学 / 環境 / 認知 / リスクアナリシス |
Outline of Annual Research Achievements |
レギュラトリーサイエンスとALARAの概念に関する関係者間のメンタルモデルとその認知の差異を解明することが、今後、科学技術に立脚した安全規制にかかる広い分野においてなされるリスクコミュニケーション(以下、リスコミ)の実効性をあげるうえで有効であると考え、本研究を実施している。 平成29年度は、平成28年度に得られた被災地で実際にリスコミを行った放射線リスクに関する専門家の「レギュラトリーサイエンスとALARAという概念」の認知度に関する調査結果を基に、宮城県で人体への放射線影響に関心を有する市民を対象としたリスコミを開催した。そのリスコミの中でアンケート調査を実施するとともに、市民のメンタルモデル解明のための半構造化面接調査を実施した。そして、リスコミ参加市民のレギュラトリーサイエンスとALARAという概念の認知度や、リスコミ時に講師がその説明にあたり、最初にこの2つの概念を説明することで、より信頼をもってリスコミに臨めたとする市民からの調査結果が得られた。また、平成28年度の医師・薬剤師・看護師を対象としたインターネット調査の結果として、医療従事者は国への信頼度が一般市民より高いことや、レギュラトリーサイエンスの認知については、職種のうち、医師と看護師の間で有意差が見られ、医師が看護師と比べて、その認知度が高いが、ALARA については、3職種間で有意差は見られなかったことなどの調査結果を得た。 そして、市民からの調査結果について分野横断的な文献調査をはじめとした精査を、平成29年度に重点を置いて実施すべきと強く感じたことから、放射線以外の他の分野にも応用できるか否かを検討することを目的としたリスク研究者らを対象とした認知の差異に関する調査については、平成30年度に行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
人体への放射線影響に関心の高い被災地の市民を対象とした、放射線影響リスクに関するフォーラム型リスコミ時のアンケート調査及び半構造化面接調査を実施した。そして、リスコミ参加市民のレギュラトリーサイエンスとALARAという概念の認知度や、リスコミ時に講師がその説明にあたり、最初にこの2つの概念を説明することで、より信頼をもってリスコミに臨めたとする市民からの調査結果が得られた。 この点についてより詳細に検討することが重要であると考えたことから、あらためて文献調査を含めた検討を行った。 このように、この検討結果を踏まえた上で、リスク研究者らを対象とした認知の差異に関する調査を実施すべきであると判断し、平成30年度に実施することとしたから。
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Strategy for Future Research Activity |
リスクの研究者及び市民におけるレギュラトリーサイエンスとALARA という概念の認知の差異に関する調査研究として、平成30年度は以下の調査を行う。 ①放射線以外の他の分野にも応用できるか否かを検討することを目的として、リスク研究者らを対象とした認知の差異に関する調査を実施する。 ②宮城、愛知、熊本におけるリスコミを開催する。計画当初は原爆被爆地である広島での実施を計画していたが、平成28年の熊本地震によりリスクについてより身近に感じ、リスクへの関心を強く有していると考えられる熊本にて調査を行うことの意義を考え、宮城、愛知、熊本において、リスクとレギュラトリーサイエンス及びALARAに関するフォーラム型リスコミを開催する。リスコミの前半の講演部分では、放射線影響をはじめとするリスクに関する説明を行い、あわせて、レギュラトリーサイエンスとALARA という概念について説明を行った上で、後半の質疑応答を行うことによりレギュラトリーサイエンスとALARAという概念を知ることと、リスク認知の変容との関係に係るデータを得ることを目的として実施する。 ③成果のとりまとめとして、これまでの研究内容を欧州公衆衛生学会などの関連国際学会で発表するとともに、学術雑誌に投稿する。さらに著書としてとりまとめる。
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Causes of Carryover |
(理由)リスク研究者らを対象とした認知の差異に関する調査については、人体への放射線影響に関心の高い被災地の市民を対象とした、放射線影響リスクに関するフォーラム型リスコミ時のアンケート調査及び半構造化面接調査の検討結果を精査したうえで実施すべきと判断し、平成30年度に実施することとしたから。 (使用計画)平成30年度に、リスク研究者らを対象とした認知の差異に関する調査を実施するものであり、その際に支出する。
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Research Products
(10 results)