2016 Fiscal Year Research-status Report
原発事故後のリスクコミュニケーション:保健従事者用ヘルスリテラシー向上ツール開発
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16K09135
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
後藤 あや 福島県立医科大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00347212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植田 紀美子 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪府立母子保健総合医療センター(研究所), その他部局等, 臨床研究支援室長 (60538081)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ヘルスリテラシー / 実践評価 / 参加型研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本国際研究は、原発事故後に福島が直面したリスクコミュニケーションの難しさを解決する糸口として、健康情報を分かりやすく伝えるための具体的対策を提示する。本研究に先行してヘルスリテラシー研修を、地域保健活動において重要な役割を担う保健師と保育士を対象に実施してきた。ヘルスリテラシーとは、住民側が健康の維持向上のために情報を得て、理解し、使おうとする知識と技術であり、また、保健医療従事者側が、健康情報を伝える知識と技術でもある。研修に参加した保健師65人と保育士45人を対象に、長期評価として質問紙調査を行った(生存科学. 2017; 27(2):191-207)。両群の半数以上が学んだ技術を1年後も活用しており、これは自信の向上とさらに学ぶ意欲に関連していた。文章を分かりやすくする技術についての自己評価は高かったが、数値では低く、また、専門用語の言い換えが難しいとの意見が聞かれた。そこで、専門用語の言い換え集と、数値を含む健康情報の分かりやすさを評価する指標から構成されるヘルスリテラシーのツール集を作成することとした。初年度の成果は以下の5点である。 1.放射線に関する健康教育で使われる専門用語の言い換え集と、印刷媒体の分かりやすさを評価するツールとして米国疾病予防管理センターが開発したCDC Clear Communication Index(CCI)の日本語版が含まれるヘルスリテラシーのツール集を、地域の保健師の協力を得て改訂した。 2.従来の研修に上記ツール集の使い方を組み入れたヘルスリテラシーの研修会を、福島県内で3回(県内保健師対象2回、大学職員対象1回)開催した。 3.避難指示解除により故郷に帰る住民の支援者向けパンフレット(環境省の事業)の改訂に、上記ツール集を活用した。 4.上記のツール集の作成および改訂の過程を振り返り、学会発表を行い、論文にまとめた。 5.介入(研修会)の効果評価のための調査計画の立案をはじめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、ヘルスリテラシーのツール集の作成および改訂を行った。予定より早く、ツール集の使い方についての研修会を実施し、ツール集の実践的な応用も行うことができ、これまでの過程を分析して学会発表を行い、さらに論文の作成をはじめている。これらの活動は地域の保健師と協働して進めているが、保育士によるツール集の評価と試用は予定より実行が遅れており、次年度の優先課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の計画は、以下の通りである。 1.ヘルスリテラシーのツール集を保育士に回覧して改訂し、また、保育の場面で使用する健康情報伝達の場面で試用する。 2.初年度に実施した研修会の参加者による評価調査を行う。ヘルスリテラシー推進においては、住民の意見を取り入れて(フィードバック)健康情報を作成する双方向性の協働が重要であり、このフィードバックについての認識および関連要因の検討も行う。 3.介入(研修会)の効果評価のために、住民(母親)調査を行う。乳幼児健康診査を受診する母親を対象に、研修参加者が作成したツールを用いて改訂した印刷媒体の、改訂前と改訂後のバーションを評価する質問紙調査を行う。 4.研究の途中経過について、分担研究者、研究協力者との検討会を行う。
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Causes of Carryover |
本研究全体の進捗が予定より早く、本年度開始前にヘルスリテラシーのツール集の骨子ができており、本年度はツール集の改訂作業が中心となったことと、保育士対象の調査の進捗が遅れたため、物品費と旅費の支出が予定より若干少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に持ち越した金額は、改訂したツール集の印刷および保育士対象の調査などで支出予定である。
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