2017 Fiscal Year Research-status Report
自殺総合対策の政策輸出によるアジアの自殺問題解決へ向けた支援に関する実証的研究
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16K09137
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
本橋 豊 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 自殺総合対策推進センター, センター長 (10174351)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 能行 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00191809)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自殺対策 / 公共政策輸出 / メンタルヘルス / カンボジア / スコットランド / 自殺実態プロファイル |
Outline of Annual Research Achievements |
自殺総合対策の公共政策輸出の可能性を検証するため、カンボジアを訪問し同国保健省及びWHOカンボジアオフィスにてカンボジアの自殺の現状と自殺対策の進捗状況を精査した。カンボジアはポルポト政権時代の大虐殺に伴う高齢者の精神的トラウマが自殺に影響している可能性が示唆されたが、収集された統計データからその根拠を見出すことはできなかった。カンボジアにおいては、メンタルヘルス及び自殺の問題は現状では高い政策課題とは認識されておらず、まず、自殺統計の整備による正確な現状把握が優先されること、国情に合わせた人材育成施策が重要であることが明らかになった。日本の国際協力としての自殺対策分野は未開拓であり、公共政策輸出のための前提条件を両国間で協議することが必要であると結論された。次に、2018年3月に自殺対策の先進国である英国スコットランド政府を訪問し、スコットランドの国家自殺戦略の概要と課題を精査した。スコットランドは英国の中で自殺率の高い地域に属することから、1990年代から自殺対策戦略が立てられてきた。自殺対策の主管は国家保健サービスであり、保健政策の一環として自殺対策戦略が立案されていた。スコットランドの自殺対策戦略は日本と同様に包括的なものであり、近年ではとくに地域内の健康格差との関連で自殺問題が論じれているとのことであった。社会階層により自殺率が異なることとその背景要因についての科学的エビデンスの蓄積が重視されているとのことだった。地域特性に応じた自殺対策の精緻化について、日本の最新の自殺対策のツールである地域自殺実態プロファイルにスコットランド関係者の強い関心が示された。施策の進んでいるスコットランドにおいても日本が独自に開発した優れた分析ツールを技術転移が可能であるとの認識が示され、先進諸国においても日本の自殺総合対策の公共輸出の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、開発途上国と先進国の二つの国において日本の自殺総合対策の公共政策輸出の可能性を検討し課題を整理することができた。日本の自殺総合対策の公共政策輸出が国際貢献の観点からも重要であるとの学術的裏づけを得ることができたことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成30年度においては、引き続きWHOの西太平洋日本地域事務局管内の開発途上国を訪問視察し、日本の自殺総合対策の公共政策輸出の可能性について検討を行う。さらに、日本の自殺総合対策のうち、どの施策を国の特性に応じて公共政策輸出することが妥当であるかの検討を行い、具体的な提言につなげるようにする。得られた成果については、国際英文雑誌に投稿し、国際的な情報発信を行う。また、和文雑誌においてもその成果を紹介することで、日本国内における自殺総合対策の公共政策輸出の有用性と必要性について啓発できるようにする。
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Causes of Carryover |
計画は順調に進展したが、海外渡航費用を節約することができたため。
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