2017 Fiscal Year Research-status Report
毛髪・爪中ニコチンおよびコチニンを用いた受動喫煙暴露の長期的評価法の開発
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16K09146
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
安田 誠 帝京大学, 薬学部, 講師 (00361965)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ニコチン / コチニン / HPLC / 前処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、受動喫煙暴露の長期的評価法を開発するため、非侵襲的な試料である毛髪・爪中のニコチンおよびコチニン分析法の開発を目指している。 H29年度は、H28年度に引き続き「HPLCポストカラム光照射蛍光検出法」による毛髪および爪試料の分析方法および前処理法を検討した。 分析方法では、HPLCの移動相検討中にニコチン感度が低下する場合があったため、移動相を構成するイオンペア試薬濃度、アセトニトリル濃度、水相組成のうち特に水相のpHについて検討した。その結果、ニコチンおよびコチニンの蛍光強度はpHの影響を大きく受けていることが明らかになった。このことから、移動相のpH変更による分離調節が制約されることとなった。しかし、高感度化に関わる光反応器については、用いる配管を延長することで感度は上昇した。 HPLC移動相条件の変更により、毛髪および爪試料由来の夾雑成分の挙動も変化したため、前処理法の改良を行った。液液抽出において夾雑成分は水相に移行しやすいが一部は有機溶媒相に分配していたため、水相の除去による有機溶媒相の洗浄操作を行ったところ夾雑成分を減少させることが可能であった。 しかし、操作は煩雑になったため、水相と有機溶媒相の比率を調節することで夾雑成分の大部分を水相に移行させることに成功した。ここで、下層となる有機溶媒相の回収時には上層の夾雑成分がピペットチップに接触するため、コンタミネーションの原因となっていることが判明した。そこで、水相と有機溶媒相の比重を調節することで有機溶媒相を上層として回収する方法を開発した。この方法は有機溶媒相の回収率増加にも寄与しており有効な方法と考えられる。 上記方法を組み合わせた結果、夾雑成分の一部についてニコチンおよびコチニンの保持時間と近いものが存在していた。微量分析には影響するため、本研究課題では引き続き分析方法の改良に取り組む必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
HPLCの移動相pHの調整によりニコチンの感度低下を防ぐことに成功したが、このことは同時に毛髪、爪試料中の夾雑成分由来のピークをも増加させていた。さらに、毛髪、爪試料に共通する前処理法の検討により液液抽出の効率を増加させることと夾雑成分の大部分を除去することの両立に成功した。しかし、毛髪および爪試料の夾雑成分としてそれぞれ固有の成分が含まれており、これらは現状の前処理によっては除去できていないことが判明した。除去できなかった夾雑成分の一部についてはHPLCの移動相組成の検討によっても、ニコチンおよびコチニンと完全に分離する条件は見出せていない。 以上のように毛髪および爪試料に共通する分析方法が確立していないため、これに引き続く研究計画についても遅れが生じている。 受動喫煙暴露によるニコチン摂取量は微量であるため、分析法の確立のためには確実に分離する条件が必須となる。
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Strategy for Future Research Activity |
ニコチンおよびコチニンの高感度分析法の確立のために、平成30年度は確実に分離する条件設定ができるよう分離選択性の異なる分析カラムを用いた分離条件を検討する。それと同時に前処理法においては、抽出操作の煩雑さを解決し、夾雑成分を除去するために保持型の液液抽出について溶出条件等を検討する。さらに、分析法のバリデーションの実施に移行する予定である。
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Causes of Carryover |
理由 毛髪および爪の前処理としてビーズ式細胞破砕装置と加圧マニホールドを使用予定であるが、分析条件の設定に時間を要し、試料の前処理条件の検討が遅れているため、予定した機器・器具の購入に至らなかったため、次年度使用額が生じた。 使用計画 ビーズ式細胞破砕装置による試料調製では、粉砕後の試料の回収率が低下することが予想されるため購入しない可能性がある。加圧マニホールドは固相抽出による多検体の前処理を効率化するために購入予定である。また、バリデーションについて分析機器の堅牢性を確認するため殺菌灯の劣化による感度低下を見積もる必要が生じていることから、光反応器の殺菌灯照度を測定する紫外線照度計を購入予定としている。
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