2018 Fiscal Year Research-status Report
ソーシャルキャピタルと地域住民の健康寿命及び医療費の関連についての実証分析
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16K09151
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
谷原 真一 久留米大学, 医学部, 教授 (40285771)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / 国民健康保険 / 後期高齢者医療制度 / 医療費 / 介護費用 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルキャピタルと医療及び介護費用が高額となる要因を検討するため、福岡県筑前町住民を対象に調査を実施した。具体的には、同町の保健事業の一環として、平成23年10月20日現在で40歳以上のF県C町全住民16,176名(男7,433名、女8,743名)を対象にソーシャルキャピタル(以後SC)、主観的健康感、生活習慣、健康状態などに関するアンケート調査が実施された際、国民健康保険(以後、国保)並びに後期高齢者医療制度(以後、後期高齢)の診療報酬明細書(以後レセプト)データなどC町が保有する情報と連結した分析を行うことについて書面説明が行われていた。アンケート調査回答者12,489名(77.2%)の中で国保または後期高齢の対象かつC町が保有する情報とアンケート調査の情報の連結に承諾を得られた4,177名を対象として平成25年4月1日に資格喪失していた364人を除いた3,813人(男1,686人、女2,127人)を分析対象とし、平成23年度および25年度診療分の国保、後期高齢、介護保険を合算した費用の相対的順位の推移を検討した。各年度の費用総額の4分位を指標として検討した結果、平成23年度の費用が下位1~25%の階級に分類された954人の内、560人(58.7%)が平成25年度の費用も下位1~25%の階級に分類され、57人(6.0%)は平成25年度の費用が上位1~25%の階級に分類された。また、平成23年度の費用が上位1~25%の階級に分類された953人の内、587人(61.6%)が平成25年度の費用も上位1~25%の階級に分類され、102人(10.7%)は平成25年度の費用が下位1~25%の階級に分類された。以上から、ある年において医療と介護を合算した費用が相対的に高額になったとしても、2年後には相対的順位が低下している者が無視できない割合で存在していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究においては,個人情報を用いることから研究開始年度(平成28年度)に平成27年2月9日に公布された「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(以後,倫理指針)」(平成27年3月31日一部改訂)に沿って倫理委員会の承認を得た後に調査対象地域である筑前町とデータ利用について契約を締結した後に研究を行うことが求められる。本研究実施にあたっては,研究費申請後(平成27年),平成28年4月に帝京大学大学院公衆衛生学研究科,平成30年6月に久留米大学医学部公衆衛生学講座と,研究期間中に2度の異動が生じた。そのため,倫理指針に従い,その都度所属先における倫理委員会の承認を得る必要が生じた。また,倫理委員会からの承認の他,筑前町と国民健康保険診療報酬明細書(レセプト)及び介護保険のデータ利用契約もその都度締結する必要が生じた。さらに,筑前町に居住する後期高齢者医療制度対象者のレセプトを本研究で利用する上で,福岡県後期高齢者広域連合から筑前町における対象者のデータの提供を受ける必要があり,異動のたびに本研究の目的や意義などについて合意を形成する必要が生じた。そのため,倫理委員会からの承認など研究実施に必要な一連の手続きが当初計画よりも大幅に複雑化したため,研究遂行に想定以上の時間を要することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに検討した医療費・介護費用の総額の他、総死亡及び要介護状態の発生等に関してソーシャルキャピタルが与える影響の推計をこの年度の主な目的とする。具体的には、Coxの比例ハザードモデルを用いて年齢、性別、飲酒、喫煙などの交絡因子を調整した上でソーシャルキャピタルがエンドポイントの発生に与えるハザード比を算出する。また、相対的に医療費が高額となる者についても従来の分析から観察期間を延長した分析を行うことでこれまでに検討した結果が影響を受けるかどうかを検証する。交絡因子については、エンドポイントの発生に与えるハザード比を算出する上では主観的健康観などの調査開始時点での健康状態とそれ以外の交絡因子が相互作用を持つ可能性を考慮した解析を実施する。要介護状態に陥ることなく死亡した対象者は転出と同様に観察打ち切りとして取り扱う。さらに、可能であれば平成30年度の資格情報や医療費・介護費用などのデータを追加し、可能な限り長期間の観察を実施した上で分析を実施する。
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Causes of Carryover |
本研究実施以後,平成30年6月に久留米大学医学部公衆衛生学講座に異動が生じた。そのため,倫理指針に従い,所属先における倫理委員会の承認を再度得る必要が生じた。また,倫理委員会からの承認の他,筑前町と国民健康保険診療報酬明細書(レセプト)及び介護保険のデータ利用契約も再度締結する必要が生じた。さらに,筑前町に居住する後期高齢者医療制度対象者のレセプトを本研究で利用する上で,福岡県後期高齢者広域連合から筑前町における対象者のデータの提供を受ける必要があり,異動前に実施した各種手続きや本研究の目的や意義などについて関係各所と合意形成を再び実施する必要が生じた。そのため,倫理委員会からの承認など研究実施に必要な一連の手続きが当初計画よりも大幅に複雑化したため,研究遂行に必要なデータの受け渡しが次年度に行われることとなったため,次年度使用額が生じた。 次年度は当初予定通りの平成29年度分のデータの受け渡しに必要な匿名化作業に必要な費用などを中心に使用し,全体の使用計画についてはおおむね当初計画に沿って進める方針である。
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