2017 Fiscal Year Research-status Report
マイクロデータ等の統合データベースを用いた受療率の変化に関連する要因の探索と解明
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16K09160
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
井出 博生 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (80361484)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 医療需要 / 死亡個票 / 死亡票 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究ではA市の死亡個票等を利用した研究を実施した。死亡個票の利用は当初の研究計画には含んでいなかったが、死亡個票の分析によって受療率(医療サービスの受療行動)の一つの結果としての死亡の様態の推移を把握することができるため、本研究の一部として有用である。 厚生労働省統計局より人口動態統計「死亡票」(性別、生年月日、死亡したとき、死亡したところ、死亡した人の住所、死亡の場所の種別、死亡の原因)および「死亡個票」(死亡票に加えて、死亡施設の名称、死因の種類、施設の所在地又は医師の住所及び氏名、その他を含む)の開示を受けた。開示された期間は1997年、2002年、2007年、2012年、2014~2016年である。データの総件数は死亡票238百件、死亡個票119百件である(機微情報を含んでいるので、現時点で詳細な情報は開示しない)。 開示されたデータについて、性別、年齢、死亡の原因(死因)、死因の種類、死亡した場所毎に集計を行った。A市は元々在宅での死亡が多い地域であるが、近年さらに在宅への移行が進んでいる。このことは主な死亡の場所であった病院から見れば、診療報酬制度などの変化によって在宅への移行が進んだと捉えられるし、A市のような都市部にあっては医療資源(病床)の不足、言い換えると供給側の制約によるものかもしれない。制度的には医療保険から介護保険に移行したということを意味するので、見かけ上は医療サービスに対する需要が下がり、受療率も低下したように見える。したがって受療率の低下に関する要因を分析すると共に、介護サービスの利用も同時にモデルに組み込んで検討することが必要であるとの結論を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の推進にあたっては、現在までに2つの課題がある。第一に、研究に必要なデータの確保という点で、現在の統計法の枠組みの中で毎年データを確保し、以降研究を実施することが障害となっている。実質的に研究が可能な期間は、年間で半分以下となり、かつ結果の学術的な公表に制約が課せられる。例えば学術雑誌での公表を目指した場合、データの開示期間後に査読によって再解析が必要となった場合には対応が困難である。第二に、毎年度データを破棄することになるので、分析に必要なデータの前処理にも相当の時間を要するという問題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
統計法の枠組みの中におけるデータの確保について平成29年度は大きな障害があったため、十分に研究を推進することができなかった。したがって平成30年度には、以下のような方法で研究を推進する。第一に、統計法によるデータの取得と並行して、自治体や保険者といったデータを保有する主体からデータの提供を受け、研究を実施する。このことによる弊害は、ある程度限定された地域や人を対象とした分析にならざるを得ないということである。このような方策については既に取り組んでおり、平成29年度中に関連して1件の学会発表を行った。
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Causes of Carryover |
データ取得上の問題でデータベースの構築に対して支出ができなかっため残額が発生している。次年度以降はデータ取得方法を複数にし、別途研究のための費用が発生する。
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Research Products
(1 results)