2016 Fiscal Year Research-status Report
感染制御のための医療従事者由来細菌のデータベース構築
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16K09181
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
一ノ渡 学 岩手医科大学, 医学部, 講師 (00360701)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 院内感染管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
<医療従事者保菌黄色ブドウ球菌株のトリクロサン低感受性の検討> 国内の手術時手指消毒法は、クロルヘキシジングルコン酸塩(CHG)を用いたラビング洗浄が主流化し、単一有効成分による感染制御が行われている。薬剤に対する過敏症・アレルギーの報告が欧米より多い事から、CHGのみに頼る感染制御の現状を考えると医療従事者の手指保有細菌の状況を把握することは重要であると考えた。そこで、スクラブ剤有効成分であるトリクロサンによる黄色ブドウ球菌株の表現型変動について、特にリボース分解能に着目して検討した。その結果、当院医療従事者由来黄色ブドウ球菌株の中にトリクロサン低感受性株が検出され、その菌株は溶血性、リボース分解能に変動が見られた。その上、薬剤耐性株に現れるsmall colony variant(SCV)も検出された。したがって、医療従事者がトリクロサン含有スクラブ剤を使用することで、SCV発現株や不完全溶血性株に黄色ブドウ球菌の表現型が変化し、消毒効果の誤判定に繋がる可能性が示唆された。この内容は第32回日本環境感染学会総会・学術集会にて報告した。 <手術室内環境細菌と医療従事者由来手指細菌の伝播に関する検討> 手術室内の清潔の定義は、フィルターなどの性能に依存されているが、手術時の環境細菌の伝播状況については、明確な報告が成されていない。そこで、手術室中に浮遊する医療従事者および患者由来の細菌を考慮した、手術実施中の手術室における環境細菌の検出状況について検討した。その結果、手術中に最も検出された菌株はミクロコッカス属であり、計7菌種が検出されたが、手術室内環境細菌の生菌数と手術経過との時間的相関は見られなかった。但し、手術中のみ検出された細菌種もあり、手術室内環境細菌のモニタリングを継続する必要があると示唆された。この内容は第39回日本手術医学会総会にて報告する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者が所属する大学の新規学部設置のために、本年度は学部設置準備や研究設備の移動が発生したことより、当初の本研究に関するエフォートに変更が生じた。そのため、当該年度に計画していたメタゲノム解析を次年度に計画することにした。しかしながら、医療従事者由来保有細菌のトリクロサン感受性および検出細菌への影響に関する解析については、計画通りに遂行でき、研究実績の概要に記した通りリボース分解能に着目した感染制御における新たな知見を得ることができた。さらに、医療従事者保有細菌の伝播について手術中の手術室内環境細菌の検出状況との検討を行うことができたことより、より包括的な感染制御に関する知見を得ることが示唆された。 以上のことから、研究計画としてはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に記したが、研究代表者の所属講座の新規設置に伴った研究設備の移動が発生したが、本学歯学部分子微生物学分野佐々木実教授の協力の元、研究設備に関する支援を受けることになった。したがって、研究計画通り協力医療機関における医療従事者由来保有細菌のメタゲノム解析調査を行う予定である。国内の医療従事者保有細菌の保有状態を把握することは非常に難しいため、本研究は希少かつ重要であると考える。前年度と同様にトリクロサン感受性に着目した検討や環境細菌との関連性についても継続して知見を得る予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者が所属する大学の新規学部設置のために、本年度は学部設置準備や研究設備の移動が発生したことより、当初の本研究に関するエフォートに変更が生じた。そのため、当該年度に計画していたメタゲノム解析を次年度に計画することにした。また、協力依頼機関との研究打ち合わせを次年度に計画したため、支出を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記に記載した理由により、協力依頼機関との研究打ち合わせ等が前年度に行えなかったため、その関連支出を計上する予定である。また研究設備に関しては、本学歯学部分子微生物学分野佐々木実教授の協力の元遂行できるが、速やかな研究遂行のために解析を外部発注することも検討し、その関連支出を計上する予定である。 その上で、当初の計画通り医療従事者由来保有細菌に関する解析を行う予定である。
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