2016 Fiscal Year Research-status Report
中心静脈カテーテル関連血流感染症撲滅のためのケアバンドル予防策徹底とその教育
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16K09184
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
萬 知子 杏林大学, 医学部, 教授 (40210801)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 潔 杏林大学, 医学部, 准教授 (10296717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中心静脈カテーテル / 血流感染症 / 予防策 / 集中治療室 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、集中治療室におけるカテーテル関連血流感染(CRBSI)を減らし、CRBSIに関連した死亡率をゼロにするために、CRBSIの危険因子を解析し、予防策の検討とその教育に関する研究である。 本年度は第一に前年度までのCRBSI率と関連データの収集と解析を継続し、感染に関連する因子の検討を行った。これまでの研究において、カテーテル関連血流感染症の危険因子は、集中治療室入室時の重症度(APACHEⅡスコア)、入院日数、集中治療室入室日数、カテーテル挿入日数、複数カテーテル挿入、カテーテルの大腿静脈留置、人工呼吸中であることが判明した。一方、感染率は0~10でばらつき、期待どおりの減少ではなかった。 そこで、次に本研究では新たな介入策として、カテーテル挿入部位の皮膚のドレッシング材の工夫、三方活栓の使用時の消毒の徹底、感染防御専門看護師の定期監視などの対策を加えていった。平成28年度前半の結果は、感染率8.33、6.2と依然として高値に留まっていた。感染に関連する因子は、集中治療室入室日数、複数カテーテル挿入、人工呼吸中であった。しかし、APACHEⅡスコアは感染群と非感染群で中央値がそれぞれ17、15とそれほど高くはなく、またカテーテル挿入日数も中央値がそれぞれ10日、9日で長期間ではなかった。APACHEⅡスコアの高値と長期のカテーテル挿入はCRBSIの危険因子であるが、それらが危険な値でなくても、入室中に人工呼吸が必要となったり、複数のカテーテルの挿入が必要になり、結果的に集中治療室入室日数が長くなった症例でカテーテル感染が多く起きていたといえる。これらの因子を避けることは臨床上、難しいが、それらがCRBSIの危険因子となることの認識とより厳重な予防策の励行が必要だと考えられる。それを踏まえて、次年度は、介入策の再検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初年度の計画書の項目に沿って点検する。 1. 前年度までの研究で抽出された感染関連因子に対する予防策をCDCで公開された新なエビデンスを参考にして、チームで検討する。→(順調)感染率の高い部位の被覆材にはクロルヘキシジン含有の資材が有用という新なガイドラインの踏襲を検討したが、その前にカテーテル挿入部位の被覆材の汚染のチェックと汗などの体液が充満した場合の被覆材の交換の励行、三方活栓からの薬液注入時のアルコール綿消毒を徹底する、さらに、感染防御専門看護師による集中治療室の巡回監視などの策を取り入れることとした。 2.データ収集、予防ケアバンドルの徹底を継続する。→(順調)1) 集中治療室におけるすべての中心静脈カテーテル挿入例に対し、医師が中心静脈カテーテル挿入を行う前に、介助についた看護師が感染予防ケアバンドルチェックリストに記載を行うことは厳格に継続されている。2) また、血流感染の検査について、カテーテル抜去時に血液培養検査2か所と、抜去後カテーテル先端培養検査を提出することの啓発を行い、検査提出率が前年度に比して各段に増加した。カテーテルの感染の判定は、週1回のチームによる感染判定会議で行っている。3) 感染関連因子その他のデータ収集とデータ集積方法に関しては、患者カルテからのデータ抽出方法の研修を受けた研究補助員がネットに接続していないパソコンでパスワード付のデータシートにデータを入力している。4)サーベイランスへの報告は遅延なく行われている。5) データ解析は現時点では前半の半年分を集計し、感染率の過去の研究との比較を行い、感染に関連する因子の分析を行った。 3. 成果発表→(おおむね順調)年度中に海外学会に演題登録し、平成29年度5月初旬に海外発表の予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はおおむね計画通りに研究は遂行できている。不足の点は、後半6か月分のデータ解析である。まずは、これを次年度で早々に行う。次年度の計画は、「カテーテル関連血流感染予防に関する教育体制の再構築および、本研究で新に講じられた予防の介入策が徹底できたかどうか、およびその効果の評価、感染率の減少に貢献したかどうかの検証を行う。」である。データ集積は軌道に乗っている。基本的な予防策は徹底されているので、これを厳格に継続することを確認する。さらに、初年度で行われた介入策の検証と新な介入策について、感染防御チームとともに検討する。初年度の研究結果では、前年までの研究結果との対比も行い、血流感染のリスク因子についての考察は深まったが、劇的に感染率の減少を得ることはできず、重要な課題が残っていると言える。そのために、初年度の研究結果を関係者に周知し、討議の場を増やす計画を立てている。中心静脈カテーテル、その他の医療材料が原因の感染を防ぐには、医療スタッフ間のコミュニケーションをよくすることも重要だと考えている。
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Causes of Carryover |
28年度に予定した海外(International Anesthesia Research Society 2016Annual Meeting) の発表は、演題登録までにデータ解析が十分に行えなかったため、28年度中の海外発表は見送った。また、28年度末に行われる国内(札幌)の集中治療学会の演題登録の時期までには、データ解析は終了できたが、次年度に延期した海外学会での発表と内容が類似であると二重発表のリスクがあるので、国内学会での発表も控えた。そのため、28年度に未執行であった学会発表経費が残金となったので次年度に繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に当初予定した学会発表を、29年度の同学会(International Anesthesia Research Society 2017Annual Meeting)で発表することとした。その準備状況は以下のようである。データ解析は終了し、演題登録を昨年度中に行い、採用通知を受けたので、29年5月の学会で発表することが確定している。
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Research Products
(1 results)