2017 Fiscal Year Research-status Report
ウィルス性胃腸炎の院内感染の現状分析と問題点の解析
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16K09185
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
鈴木 恭子 順天堂大学, 医学部, 助教 (50420857)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ノロウイルス / 感染性胃腸炎 / 院内感染 / アウトブレイク / 二酸化塩素 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス性胃腸炎は院内感染において重要な感染症であり、主な原因ウイルスとして、ロタウイルス、ノロウイルス、アデノウイルスがある。ロタウイルスはアルコールによる感染防御対策が有効であるが、ノロウイルスはアルコール抵抗性であり院内感染対策に苦慮する。ノロウイルスは毎年1万人以上の感染者が発生しており、新生児から高齢者に至るあらゆる年齢が感染発症し、例年11月から1月ころにアウトブレイクを起こす。しかしノロウイルスに対するワクチンの実用化には現時点では見通しが立っておらず、効果的なノロウイルスの感染予防対策が重要である。 ノロウイルスは接触感染のみならず空気粉塵感染もあるため、空気浄化も必要となる。二酸化塩素は常温常圧下では気体として存在し、水に容易に溶解して水溶性となる。二酸化塩素分子はラジカルとしての特性をもち、比較的高い酸化還元電位を有する。二酸化塩素水溶液は各種のウイルスやMycobacterium valiumなどの細菌、真菌に対しても低濃度で不活化活性を示すことが報告されている。ガラスシャーレに付着させたインフルエンザウイルスと大腸菌は二酸化塩素ガス0.05ppm、4時間反応させることによりほぼ100%低滅し、ネコカリシウイルスと黄色ブドウ球菌も99%低滅した。 ノロウイルスに対して強力な抗ウイルス活性を有する二酸化塩素を病院病棟内の接触感染と空気粉塵感染対策に使用することにより、ノロウイルス胃腸炎を含む感染性胃腸炎に対する院内発生抑制効果について明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年10月から4月の期間中に入院した感染性胃腸炎が疑われる小児患者の便検体のPCRを施行し、結果を平成29年10月小児感染症学会および平成30年2月小児消化管感染症研究会で発表した。 2回目の実施として平成29年10月から平成30年3月まで同様に検査を行い、現在結果を解析中である。 流行の度合いが平成28年度と29年度では異なるため、解析している検体数に差が出ている。 平成28年度、29年度とも二酸化塩素ゲルを病室内に設置し、また消毒用として二酸化塩素水溶液を用いて消毒を行っている。二酸化塩素ゲルの設置場所については病床面を考慮しながら均一になるよう設置している。 研究方法について大きな変更は必要ないと思われるが、二酸化塩素設置による効果判定にはまだ症例数の積み重ねが必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はノロウイスルのアウトブレイクが少なく、検体数が思うようには集まらなかった。協力を得られる病院があるか検討したい。 また二酸化塩素の効果については後方視的にも検討する必要があり、今後の課題である。 現時点で研究は2年間継続して行っており、症例の積み重ねが必要である。
(使用計画) 学会発表は国内で2回行った。平成29年度の解析結果を今年度も発表する予定である。
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Causes of Carryover |
研究年数が2年間(2シーズン)でシーズンにより感染性胃腸炎の流行が異なることから、検体数が十分に集まっておらず、まだ比較対象の解析が出せない状態である。 また二酸化塩素設置の効果の比較の分析が完了していない。 協力を得られるためには医療機関の倫理委員会を通す必要があり、積極的な働きかけをおこなっていく。 国際学会へのデータを発表するまでまだデータが集まっておらず、検体数を集める努力をしたい。
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