2016 Fiscal Year Research-status Report
薬物中毒死、頸椎損傷、及び入浴死における死後画像診断の可能性と限界を探る
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16K09198
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
臼井 章仁 東北大学, 医学系研究科, 助教 (90588394)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法医解剖 / 死亡時画像診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の死因究明に関して、基本理念を定めた「死因究明推進計画」が閣議決定され、CTやMRIを使用した「死亡時画像診断」の積極的活用が謳われている。東北大学では、これまでに1200例以上の死後画像診断症例を経験し、その撮影件数は国内でトップレベルにある。 本研究の目的は大きく3つを設定しており、①薬物中毒の死後画像診断における特徴的所見とその診断能、②死後画像診断による頚椎(頸髄)損傷についての画像診断上のポイント、および③入浴死に対する死後画像診断の有用性である。 本年度は、研究目的に掲げた①薬物中毒の死後画像診断における特徴的所見とその診断能について中心に研究を行なった。対象としたのは死後CT画像を撮影し、法医解剖において胃内容物の性状・色・体積が記録されたもので、薬物精密分析により致死的な血中薬物濃度が検出された薬物中毒死の症例である。この中で覚せい剤のような静注する薬物、硫化水素や一酸化炭素のような毒性の気体による中毒死症例は除外した。主に自殺を企図して、薬物を経口摂取した症例が多く、約80%の症例に、死後CT画像上で胃内高吸収物が確認された。しかしながら、特定の薬物がX線高吸収を示すわけではないこと、薬物の経口摂取前後の飲食物により胃内の所見が影響されること、また、約20%の症例においては胃内高吸収物がみられないことが分かった。これにより、死後CT画像のみで死因診断を行う際には、高確率で薬物中毒死を診断できる可能性があることが分かったが、約20%は最終死因診断を誤ってしまう可能性があることが分かった。これは保険学上で大きな問題になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主に死後CT画像による薬物中毒死に関して研究を行なった。結果については、既に、学会発表など行なっており、遺体発見現場の捜査状況(薬物空包の有無など)と、画像所見を組み合わせることで、解剖前に有用な情報提供が可能であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
薬物中毒死については概要に記した内容を論文投稿済みであり、次年度は機会があれば、CTだけではなくMRIによる撮影を行なった上で解析を行なう予定である。 頚椎(頸髄)損傷や入浴死に関しては、すでに学会発表など行っているものの、対象が法医解剖事例であることもあり、症例数が少なく、今後症例数を増やしてさらに検討を行なっていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、3Dプリンターといった高額機器購入の予定であったが、例えば骨折片といった不連続構造体はプリンター出力が困難であること、材料費などランニングコストがかなり大きいこともあり、これによる研究継続は困難であり、購入はしていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
画像解析用PC、解析用ソフトウェア、および専門図書購入に使用予定である。
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