2016 Fiscal Year Research-status Report
細胞外障害ミトコンドリアを起点とし敗血症病態の解明に迫る
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16K09203
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
鵜沼 香奈 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (30586425)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 敗血症 / ミトコンドリア / オートファジー / 肝臓 / リポポリサッカリド |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症(sepsis)とは、感染した病原菌が血流に入りサイトカインが高産生され、免疫細胞が異常に活性化された状態である。臨床医学の進歩にもかかわらず、敗血症性多臓器不全による死亡率は30%~50%前後と報告され、未だに高い水準にある。しかしながら、これらの炎症性サイトカインの血中濃度は敗血症早期に収束することが知られており、敗血症で遷延する臓器障害の原因として、持続するミトコンドリアの機能低下が病態の本態と考えられている。我々はこれまでに、心臓、肺、肝臓などの主要臓器を始め、複数の臓器で活性酸素種(ROS)が集積していること、そしてこのROSの集積を抑制すると臓器障害や機能不全が軽減することなどを、抗ストレス酵素であるヘムオキシゲナーゼ(HO-1)誘導等を行って報告してきた。敗血症モデルラットの複数臓器において、オートファジーに必須の遺伝子とリソソームに必須の遺伝子の双方が、転写制御因子EB(TFEB)やTF3Eによってコントロールされ協調的に発現することが知られているが、我々もこれらの密接な関与を報告してきた。本研究では、大腸菌などのグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポポリサッカリド(LPS)を処理したラットの肝臓において、電子顕微鏡を用いた詳細な観察により、血管内や血管近傍に変性して電子密度の高くなったミトコンドリアが集簇している像が認められることを明らかにしたが、オートファジーノックアウト細胞ではこれらの変化がキャンセルされることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
LPSを処理したラット肝臓の電子顕微鏡を用いた詳細な観察により、血管内や血管近傍に変性して電子密度の高くなったミトコンドリアが集簇している像が認められ、オートファジーノックアウト細胞ではこれらの変化がキャンセルされることが明らかになった。これらのミトコンドリアの細胞外分泌の意義について、単離白血球に精製ミトコンドリアを曝露した実験などが順調に推敲されている。さらに、同じモデルの肺において、MALDI-TOF MS解析で新規に著変するタンパクも同定し、同時に新たな研究にも着手しており、当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアが細胞外に分泌される意義について明らかにするために、単離白血球を用いた研究結果に統計学的有意差があるか否かなどを含めさらなる実験を重ねていく予定である。また、細胞外に分泌されたミトコンドリアが直接的に免疫細胞を活性化している可能性等があるかについても検討を加えていく予定である。同時に、他臓器でも同様の変化が認められるかなどについても研究を進めていく予定である。
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Research Products
(10 results)