2017 Fiscal Year Research-status Report
凍結組織切片を用いたMALDI質量分析による薬毒物の直接定量
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16K09206
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
南方 かよ子 浜松医科大学, 医学部, 特任研究員 (70115509)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 危険ドラッグ / 合成カンナビノイド / 尿 / 高感度定量 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
尿は非侵襲性であるため、血液や組織よりも入手しやすい検体であるが、危険ドラッグである合成カンナビノイド類の分子イオンの尿中濃度は血液や組織よりも極めて低く、中毒により死亡していても検出できないことが使用初期の頃より報告されている。そのためそれらの代謝物の検出によって摂取の指標とする提案もなされてきた。しかし合成カンナビノイド類の構造は類似しているため、主代謝物の構造が同じで中毒物の特定が困難であることが多いので、やはり元の分子イオンを検出することが望ましい。我々は尿中の合成カンナビノイドの分子イオンを超高感度に定量する方法の考案を試みた。 【方法】尿400 μlに内部標準を4 μl、buffer80 μl、1-chlorobutane (CB) を800 μl添加し混合後、10,000 Gで2分間遠心し、上層を別容器に採取した。再度、CBで抽出し採取した。CBを蒸発させ残渣を100 μlのメタノール溶液とした。その5 μlをAcquityのLCに注入し、 4000 QTRAP MS/MS (AB SCIEX)で測定した。【結果及び考察】検出限界は 3 - 8 pg/ml, 定量域は10 - 1000 pg/ml であった。第1の剖検尿ではAB-PINACA, AB-FUBINACAが夫々23, 10 pg/ml, 第2の剖検尿ではAB-CHMINACA, 5F-AMBが夫々239, 19 pg/ml, 第3の剖検尿ではMAB-CHMINACA, 5F-ADBが夫々229, 19 pg/mlであった。これらの血液や組織中濃度については報告されている症例もあるが、尿中濃度の報告は未だなされていなかった。 以上の結果をForensic Toxicology (2017) 35:275-283で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度に予定していた「(1)測定の最適化(2)MALDI-MS/MS装置のソフトの改良を行うことにより、通常の装置では不可能であった異なる2種類のprecursor ionからの各々のMS/MSを可能とする(3)大きい直径のwell使用による精度の向上」は28年度に完了し、Forensic Toxicology (2016) 34: 151 で報告した。
29年度は超高感度な同定と定量法の開発を予定していた。危険ドラッグに属する合成カンナビノイド類の尿中濃度は極めて低いので、中毒による死者の尿でさえも検出できていなかった。我々は尿中からクロルブタンにより効率よく抽出できる条件を検討し、4000 QTRAP tandem mass spectrometer を用いて高感度に測定できる条件を検討することにより pg/ml という法医学の分野では世界で今までに発表されていない超高感度なレベルで3名の死者から6種類の合成カンナビノイドを定量することができ、Forensic Toxicology (2017) 35: 275 で報告することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
薬毒物の代謝物の中には薬理活性を持つものもあり、これらは死因や副作用に関与してくるので代謝物の研究は重要であるがあまり研究は進んでいない。法医学では解剖検体を扱うことができるので、原因物質のみならず代謝物も検出することができるので、それらの超高感度な同定と定量法の開発を目指す。現在、危険ドラッグ類の致死量は不明である。代謝物の定量により、もとの物質の摂取量を推定できるならば、致死量を推定できる可能性も出てくるので、それらに関連した研究を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)28年度において装置が予定額よりも低く入手できた事などで659,702円を29年度使用へ追加した。その結果、29年度の予算額が増額となったため、380,707円を30年度使用とした。
(使用計画)危険ドラッグ類の標準品はアメリカのCayman社が主として販売しているが10mgが数万円と高価である。また、代謝物の研究にはヒトのヘパトサイトを用いて、代謝物を標準品から作成し実際の解剖検体中の代謝物と比較する必要があるが、ヘパトサイトも最小単位が20万円と非常に高価であるので、それらの購入に充当する予定である。
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Remarks |
HamaMed-Repository http://hikumano.hama-med.ac.jp/dspace/
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Research Products
(8 results)