2016 Fiscal Year Research-status Report
肝臓におけるvillinの転写制御機構に関する研究
Project/Area Number |
16K09207
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
尾関 宗孝 京都大学, 医学研究科, 助教 (80549618)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | villin / 肝臓 / 転写制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト肝癌細胞HepG2のゲノムDNAからvillinの第一エクソンからプロモーター部分上流約2kbpまでを含むフラグメントをPCRにて増幅し、サブクローニング後DNAシークエンス解析により配列を確認した。本フラグメントより適宜必要な部分を増幅し、デュアルルシフェラーゼレポーターアッセイのためのベクター構築を行なった。予備実験により、プロモーター開始点付近はvillin発現に必須であることが示唆されたため、プロモーター開始点を含む種々の長さのvillinプロモーター部分を挿入したベクターを構築し、HepG2細胞を用いてレポーターアッセイを行った。HepG2細胞においてvillinのmRNA発現低下を引き起こすリトコール酸に対するルシフェラーゼ活性の応答を見ることで、リトコール酸応答部分の探索を行った。その結果、上流100bp以内にリトコール酸刺激に応答して転写活性を抑制するプロモーター部位が存在することが推察された。本プロモーター部位は、リトコール酸のみならずデオキシコール酸やケノデオキシコール酸に対しても同程度に抑制し、ウルソデオキシコール酸に対しても弱いながら有意に抑制することが示唆された。一方、コール酸に対しては応答が見られなかった。定量PCRによりvillinのmRNA発現量を調べたところ、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸では約40\%の発現抑制が認められたのに対し、リトコール酸では約10\%まで抑制されていた。このことから、本プロモータ部位は種々の胆汁酸刺激に応答して転写を抑制したものの、リトコール酸に対しては選択的に転写抑制する仕組みが別に存在することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究計画においては、 レポーターアッセイベクターの構築とその実施が主であった。当初約2kbpを対象として研究を開始したが、これまでに目的となるプロモーター部位は開始点から上流100bp以内に存在することが推察された。本プロモーター部分はデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸にも同程度に応答し、またウルソデオキシコール酸に対しても弱いながら有意に応答を示したことから、いくつかの胆汁酸に対して応答してvillinの転写を制御するものと考えられた。しかしながら、villinのmRNA発現量を定量PCRにより調べてみると、他の胆汁酸に比較してリトコール酸刺激により顕著に強い発現抑制が観察され、リトコール酸特異的な転写抑制機構の存在が示唆された。以上のことから、本年度内においてリトコール酸選択的ではないものの胆汁酸に応答するプロモーター部位を絞り込むことができ、平成28年度の研究計画はおおむね達成されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究から、胆汁酸に応答して転写抑制を行うプロモーター部位とは別に、リトコール酸選択的な転写抑制機構の存在が示唆された。しかしながら本プロモーター活性の発現には開始点付近が必須であることが予備実験により示されており、平成29年度においては、引き続きプロモーター上流100bp内に存在する胆汁酸応答部位について、さらに詳細に検討することとする。当該プロモーター部位によるリトコール酸刺激に対する転写制御の詳細をさらに検討するために、これまでの研究で明らかになっている核レセプターの関与について、アゴニスト等の薬剤やsiRNAによるノックダウンにより、転写がどのように変化するか観察する。また、これまでの研究で対象となるプロモーターを100bp程度まで絞り込んだが、次のステップとして実際にリトコール酸への応答配列を特定するために、DNase I Footprintingアッセイを計画している。近年、蛍光色素によるラベルとキャピラリー電気泳動を組み合わせた方法が開発されており、従来のアイソトープを用いる方法に比べて簡便かつ安全に行うことができる。当該研究室に設置されているDNAシークエンサーを用いて実施できることから、現在そのための詳細な条件を検討中である。
|