2017 Fiscal Year Research-status Report
高精度な新規低体温症診断マーカーの開発と超生体反応に伴う分子動態の解明
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16K09209
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
上野 易弘 神戸大学, 医学研究科, 教授 (30184956)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 武史 神戸大学, 医学研究科, 講師 (20335441)
高橋 玄倫 神戸大学, 医学研究科, 講師 (90509100)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 低体温症 / 法医学 / 免疫組織化学染色 / 腎糸球体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、特異的な形態学的所見が乏しいために死因診断が困難な、凍死に代表される低体温症関連死亡例に有用な高精度新規死因診断マーカーの開発と、法医剖検試料における遺伝子及び蛋白質発現を検討する上で非常に重要であるものの、未だ明らかになっていない”超生体反応”に伴う遺伝子及び蛋白質発現の実態について明らかにすることを目的とするものである。 現在までに、剖検例110例について、腎臓におけるHSP70発現を検討し、寒冷群試料では腎糸球体上皮細胞の核で強発現することを明らかにした。これまでの研究に引き続き、症例数を増やして検討してきたが、HSP70の腎糸球体における発現解析は、剖検例における寒冷暴露マーカーとして有用であることを確認することができた。またHSP70のmRNA発現は、寒冷暴露群では有意に低いことを確認した。一方で、寒冷暴露により末梢血管の収縮が起こるが、これを担うエンドセリン-1の発現について免疫染色により検討したところ、尿細管細胞で弱発現するものを認めたものの、寒冷暴露を示唆できるものではなかった。 また本研究では、法医実務を念頭においた死後経過時間の長い試料についても検討したが、ヘマトキシリン・エオジン染色で腎糸球体の核濃縮や組織構造の部分的融解が始まっている試料では、寒冷群試料であってもHSP70の発現は本来の発現パターンを示すことはなかった。この結果から、核濃縮がみられる試料では免疫染色の結果を慎重に判断することが必要であることが明らかとなり、現在判定に有効な核濃縮率を算出中である。 超生体反応に伴う実験については、低体温症モデルマウスを作製するためのモデル構築法を決め、マウスにおいてHSP70発現解析を行うための抗体やプライマー配列等を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度中に着手予定であった動物実験が遅延している。理由は、動物実験施設を利用するための申請手続きが遅れたためであり、今後の研究遂行に重大な問題を及ぼすものではない。現在のところ申請書はほぼ作成しており、提出の目途はたっている。またモデル動物の作製方法や使用する試薬等はすでに決めており、実験系の構築は問題なく進んでいる。ヒト試料を用いた実験については順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年5月中に動物実験に関する申請書を提出し、8月~9月の間に実験を実施する予定である。低体温症モデルマウスを構築後、安楽死させ、経時的に各種生体試料を採取し、HSP70のタンパク質及び遺伝子発現の変化について検討する。 ヒト試料についても、寒冷期を中心に試料収集及び解析を継続して進める予定である。
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