2016 Fiscal Year Research-status Report
外傷性・非外傷性軸索損傷の形成機序の解明と法医学的鑑別診断法への応用
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16K09212
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小片 守 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (10152373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 敬人 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (40512497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | びまん性軸索損傷 / 外傷性・非外傷性 / 法医学的鑑別診断法 / 髄鞘の再生因子 / 神経栄養因子 / 再生阻害因子 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでわれわれは,β-amyloid precursor protein (APP)に対する免疫染色には2つの染色パターン(1型:索状配列型,2型:不規則型)が存在し,これにより外傷性,非外傷性の軸索損傷を鑑別できる可能性があることを報告してきた。最近,好中球の主要な遊走因子であるケモカインinterleukin(IL)-8が,中枢神経系においては髄鞘形成にも関与することが報告された。そこで,IL-8が外傷性軸索損傷の指標となり得るか否かを免疫組織化学的に検討した。 鈍的頭部外傷死44例(受傷後生存時間:短時間~90日間)及び頭部外傷のない対照44例(虚血性心疾患,窒息,失血,中毒等)の脳梁切片を用いて,APP,IL-8に対する免疫染色を行ったところ,頭部外傷死例では, 44例中9例でIL-8陽性の軸索変性像が検出され,受傷後生存時間が3日以上24日以内の例であった。また,IL-8はAPP染色パターン1型のみに陽性を示した。さらに,IL-8陽性の変性軸索周囲のオリゴデンドログリアにおいてもIL-8発現が認められた。 以上の結果から,ケモカインIL-8は,受傷後3日目頃から軸索損傷周囲のオリゴデンドログリアが産生し,髄鞘の再生を促進するために損傷された軸索に集積したものと考えられる。IL-8は外傷性を示唆するAPP染色パターン1型のみ陽性がみられることから,外傷性軸索損傷の法医病理学的診断の新たな指標となる可能性が示唆された。また,生存時間が3日以上で陽性となることから,受傷後生存時間の推定にも有用である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前項に記載したように,髄鞘の再生因子でもあるIL-8が外傷性軸索損傷診断のための新たな指標となる可能性を示す予想以上の結果が得られ,法医学分野の国際雑誌に投稿し,受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-8に関しては,脳梁以外の脳各部位における分布の違いについても検討する予定である。さらに,IL-8以外のサイトカイン,髄鞘の再生に関わる神経栄養因子,再生阻害因子の発現についても検討を進め,外傷性軸索損傷の法医学的鑑別診断法の確立を目指す。
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Research Products
(5 results)