2016 Fiscal Year Research-status Report
25B-NBOMeによるセロトニン症状発症にかかわる機序と環境温度の関係
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16K09215
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
中村 磨美 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70753763)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新谷 香 (石田香) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345047)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | セロトニン / 環境温度 / 高体温 |
Outline of Annual Research Achievements |
セロトニン受容体のうち5-HT2A受容体に強力に作用する25B-NBOMeを用い、環境温度とセロトニン症候群や高体温発現の関係について調べる実験を行った。7週齢のSDラットを用い、腹腔内に温度測定用のロガーを植え込み、回復期間の後0.25mg/kgの25B-NBOMeもしくはコントロールとしてPBSを腹腔内注射し、2時間行動および体温の測定を行った。薬物投与実験は、23℃または29℃環境下で行い、それぞれ5体以上についてデータを得た。 (結果1)明らかな行動変化としては観察できなかったものの、29℃環境下で25B-NBOMeを投与した群は、PBS投与群および23℃環境下で25B-NBOMeを投与した群に比べ、有意に高体温を引き起こした。投与後早期には、環境温度に関わらず25B-NBOMe投与群で尾の表面温度が低下し、末梢血管収縮による放熱抑制が示唆されたが、投与後後期には褐色脂肪組織(BAT)の温度が上昇し、BATでの熱産生が示唆された。 (結果2)末梢血中のセロトニンおよびカテコラミン濃度を測定したところ、25B-NBOMe投与群は環境温度に関わらずカテコラミン濃度が上昇しており、29℃環境群は25B-NBOMe投与の有無に関わらずセロトニン濃度が低下していた。カテコラミン上昇とセロトニン抑制が同時に起こった時に、高体温が引き起こされると示唆された。 (結果3)結果2を受け、29℃環境下でセロトニン投与後に25B-NBOMe投与を行ったところ、高体温が抑制された。 上記の結果1について、平成28年6月16日第100回日本法医学会学術集会(東京)で口演発表を行った。結果2,3について、平成29年6月8日第101回日本法医学会学術集会(岐阜)で口演発表を行う予定である(演題採択済)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)25B-NBOMeでも高温環境下でセロトニン症状が誘発されやすいのか: 23℃および29℃での薬物投与実験については、ほぼ計画通り実施できた。バイタル測定については、当初テレメトリーシステム(プライムテック社製)で血圧、心拍数、体温を評価する予定だったが、予備実験の段階で血圧および心拍数については有意差を認めなかったため、体温のみに対象を絞り、体温ロガー(Star-Oddi社製)に変更して実験継続した。 臓器中の25B-NBOMe濃度定量については、肺に高濃度に分布し、死後再分分布を引き起こすことを明らかにした(論文投稿中)。組織学検査は、予備実験の段階で器質的変化を認めなかったため、優先度を下げ全個体としては未実施である。 25B-NBOMe投与とセロトニン受容体の関係を見るため組織免疫染色、ウェスタンブロットを予定していたが、BATでの熱産生に対象を絞り、関連するUCP1、pPKA産物についてウェスタンブロットを行った。 実験実施の過程で、末梢血中のセロトニンおよびカテコラミン濃度が環境温度依存性の体温変化に関与している可能性が示唆された。そのため、29℃環境下で人為的にセロトニン濃度を上昇させた状態で25B-NBOMe投与する実験を行った。 (2)25B-NBOMeでも、環境温度が低いと低体温が誘発されるのか:高温環境と末梢セロトニン濃度低下の関係が示唆され、新規の知見であるため、高温環境での実験を優先させ、低温環境下の実験については未実施である。
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Strategy for Future Research Activity |
環境温度と25B-NBOMe使用時の体温変化について、末梢血中のセロトニンおよびカテコラミン濃度の変動に注目し、研究を進める。平成28年度に、高温環境下で人為的にセロトニン濃度を引き上げる実験を行った。平成29年度は、常温環境下で人為的にセロトニン濃度を下げるため、末梢セロトニン合成関連酵素Tph1を特異的に阻害するLP533401を投与したセロトニン抑制モデルマウスを用いて25B-NBOMe投与時の体温変化を測定する。LP533401については、マウスでの使用報告しかないため、実験動物をラットからマウスに変更する必要がある。しかし、25B-NBOMeについてはマウスでの実験報告がないため、マウスに対する用量決定、体内動態についてラットとの違いを検証してから行う。 これまでの研究で、25B-NBOMeのセロトニン受容体結合そのものが体温上昇に関連するのではなく、相互作用でカテコラミンが上昇することが熱産生を引き起こしている可能性が示されている。そのため、カテコラミン阻害薬を用いて高体温が抑制されるか検証を行う予定である。 現時点で、BATが環境温度依存性の体温変化に関与する直接的な証拠は得られていない。BATでの糖取り込みおよび代謝、血流変化の観測について検討中である。
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Causes of Carryover |
動物のバイタル測定機器として、当初血圧、心拍数、体温を測定できるテレメトリーシステム(プライムテック社製)を使用する予定で予算を計上していた。しかし、研究の遂行に伴い、体温測定に対象を絞ったため、使用機器をより低価格なDSTロガー(Star-Oddi社製)に変更した。購入予定であった25B-NBOMeを、他研究機関より無償で譲り受けることができた(受け取りの交通費のみ発生)。生化学検査の項目数および検体量が当初の見込みより多く、抗体等試薬も高額であったため、算出の金額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の予算と合わせ、平成29年度に研究で使用する各種試薬(LP533401、各種アドレナリン受容体抗体)や生化学検査費用、グルコース細胞内取り込み量測定キットなどの購入費用として充当する。
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Research Products
(2 results)