2017 Fiscal Year Research-status Report
剖検事例におけるリチウム中毒の評価と簡易リチウム分析法の検討
Project/Area Number |
16K09217
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50721974)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中毒 / 法中毒 / リチウム |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、精神疾患で医療機関にかかる患者数は大幅に増大し、そのうち双極性障害の患者は少なくとも数十万人にのぼると見積もられている。双極性障害の治療で用いられるリチウムは、自殺目的で大量摂取する事例に加え、有効域と中毒域が近接しているため慢性中毒の頻度が比較的高い薬物である。リチウムの分析は元素分析装置を所有する機関が限られており広く行われていない。法医剖検例では、患者情報を入手できないこともあり、リチウムが死因に影響を及ぼしていても見過ごしている可能性がある。本研究では、高度・高額な機器がなくても全血試料からリチウムを簡便かつ迅速に検出する方法を確立して法医剖検事例に応用し、リチウム中毒の影響ならびにその実態を明らかにすることである。 本年度は、昨年度に確立したF28ポルフィリンキレート化合物(F28TPP)をリチウムの特異的発色剤とした「色相変化」によるリチウム検出法について、色相変化に基づく半定量値と分析機器を用いて測定した定量値を比較し、色相変化の定量性について検討を行った。また、本法を用いて法医剖検事例に対しリチウムのスクリーニング検査を実施した。 色相変化により推定した血中リチウム濃度と吸光度法で測定した値は概ね良好な相関を示し、本法は半定量的リチウムを検出できるスクリーニング法であることが確認された。剖検事例において、本法により簡便かつ迅速にリチウム存在の有無を確認することができ、患者のリチウム服用に関する情報が無くともリチウム摂取事例を抽出することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
F28TPPを用いた「色相変化」によるリチウム検出法が法医剖検事例に応用できることが分かり、本法がリチウムのスクリーニング検査として有用であることが示された。本法により、剖検事例からリチウム服用事例を抽出することができた。これらの事例について、血中および脳中リチウム濃度を測定し剖検事例におけるLi中毒を評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の上半期は、スクリーニング検査で抽出された事例の血中および脳中Li濃度を測定する。 下半期は得られたデータを集積し解析を行い本研究の総括を行う。
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Causes of Carryover |
F28TPPを用いた「色相変化」によるリチウム検出法を用いて、剖検事例からリチウム服用事例を抽出し、これらの事例について、血中および脳中リチウム濃度を分析機器で測定する予定であった。しかし、分析機器の故障が頻発し、十分に測定が行えなかったため。この問題は解決され、本年度にその差額分を分析に関わる経費に使用予定である。
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Research Products
(1 results)