2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K09221
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
山口 晃志 日本医科大学, 医学部, 講師 (90465344)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ゾルピデム / 代謝物 / 胆汁 / 水酸化体 / 合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゾルピデムを服用した死者の胆汁に含まれるゾルピデムの水酸化体を分析したところ、既知の代謝物であるM-4よりも強度の強いピークが確認された。質量分析計でその構造を調査したところ、ピリジン環に水酸基が存在することが分かったが、それ以上の位置の特定はできなかった。可能性のある構造は、5-、7-、もしくは8-水酸化体である。最も合成が容易と予想された8-水酸化体を合成したが、データが生体資料のものと一致しなかった。 そこで、7-水酸化体の合成を試みた。まず、8-水酸化体の合成と同じ方法を適用し、7-ブロモゾルピデムを合成した後、ブロモ基のメトキシ化を試みたが、メトキシ化されなかった。この理由は、ブロモ基の隣にメチル基が存在することでブロモ基が立体的に保護されているため、と考えられた。 次に、メトキシ基を予め導入した2-アミノピリジンからイミダゾピリジン環を形成する合成ルートを検討した。2-アミノ-4-メトキシ-5-メチルピリジンの合成を試みた。3-メチルピリジンを出発物質として、5ステップで合成した。しかし、全てのステップを通じての収率は10%以下と低く、合成法の改善は今後の課題である。得られた2-アミノピリジンは続いてN,N-ジメチル-4-(4-メチルフェニル)-4-オキソブタナミドとの反応により、7-メトキシゾルピデムを低収率(18%)ではあるが合成した。続いて脱メチル化により、7-ヒドロキシゾルピデムを得た。 合成品のMSや保持時間は生体資料の抽出物と一致した。この結果から胆汁中に多く存在するゾルピデムの水酸化体は7-水酸化体であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
代謝物の標準品を合成することは本研究の最も困難な部分であると考えている。これまでに、ゾルピデム服用者の胆汁中に最も多く存在しているゾルピデム水酸化体を合成できたことは大きな進展である。しかし、これはまだ本研究の最初の段階である。今後、生体資料中の代謝物の定量法を確立し、濃度の解釈を法医学分野で応用することを検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
合成ルートがある程度確立されたゾルピデムの7-水酸化体について、微量分析で用いることができるように純度の高い標準品を合成する。 胆汁、尿、血液中に存在するゾルピデム及び代謝物について、分析法を確立して、分析法のバリデーションを確かめる。 実資料の分析を通して、代謝物の分析から何が分かるのかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
標準品の合成法を確立するため、様々な方法を試行錯誤した。試行錯誤の段階ではスケールが小さいものとなるため、試薬費があまりかからない。しかし、合成法が確立すれば、より大きなスケールでの合成となり、試薬が多く必要になる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
標準品の合成法を確立し、大スケールの合成を手掛ける。大スケールの合成をするためには、大きなガラス器具や専用の備品、多量の試薬などを購入する必要がある。さらに、標準品合成が終了すると、生体資料中の微量分析となるため、分析カラムや、前処理用の消耗品が必要になる。
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