2016 Fiscal Year Research-status Report
薬毒物が骨リモデリングに与える影響―骨形成と骨吸収の両側面からの検討―
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16K09224
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
菅野 さな枝 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (50391090)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨芽細胞の分化 / 覚せい剤 / アルカリホスファターゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は骨リモデリングの骨形成部分に焦点を当て研究を進めている。最初に、分化に伴い石灰化を誘導するマウス骨芽細胞様細胞MC3T3-E1細胞が、骨形成を行う培養条件の検討を行った。既報の論文を参考にし、分化の指標であるアルカリフォスファタ-ゼ(ALP)活性の値を元に培養条件の検討を行った。その結果、beta-glycerophasphate とestradiolを添加し培養するとALPの値が増加する傾向があった。そこで、法医学で最も深刻な依存性薬物で長期的に使用される覚せい剤であるメタンフェタミン(MAP)を選び、分化に伴うMAPの細胞内蓄積と分化指標への影響を調べた。MAP曝露による細胞生存率実験を行い、生存率に影響を与えない濃度である20及び100 microMを実験に用いた。MC3T3-E1を分化又は未分化条件下、MAP曝露下で10日間培養した。細胞中のMAP及びアンフェタミン(AP)の定量は、LC-MS/MSを用いて行った。分化の指標としてアルカリフォスファターゼ(ALP)の活性測定、及びALPと骨芽細胞分化に関わる転写因子であるRUNX2のmRNA発現量をRT-PCR法により解析した。その結果、分化条件下の培養では、未分化細胞に比べALPの活性が増加し、MAPによりその活性は抑制された。一方、分化に伴いALPとRUNX2のmRNA発現量は増加したが、MAP曝露による大きな変化は見られなかった。細胞内MAP及び代謝物であるAP濃度はMAPの曝露濃度依存的に増加が見られた。MAPの骨への蓄積が報告されているため、分化による石灰化に伴い細胞内MAP濃度の増加が推定されたが、分化細胞は未分化細胞に比べ、MAP及びAP濃度共に減少した。MAP曝露による分化抑制機構に関してはさらに詳細な実験を進めているが、ALP活性が減少したことより骨形成を阻害する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MC3T3-E1細胞の分化条件とメタンフェタミンの曝露条件の検討と影響を調べた。ALPの活性測定や分化に伴って変化するたんぱく質のmRNA量の測定、石灰化の染色など行った。まだ第一段階であるが、現在得られた結果は今年度の法医学会にて報告する予定である。これらの理由から研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
分化条件を検討したが、現時点ではALPがわずかに増加したのみであり顕著な石灰化が見られないことより、更なる分化条件の検討を行う予定である。今後は良い条件の実験系を用いて、覚せい剤を含めた薬毒物の骨形成への影響を明らかにする予定である。骨形成に影響を与える薬毒物が見いだされれば、骨芽細胞に特異的に発現するタンパク質の発現量などから骨分化過程のどこを変化させるか調べる予定である。その後、骨吸収への影響を破骨細胞を用いて調べる。
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Causes of Carryover |
骨芽細胞を分化させるためには、一般の細胞に比べ長期間の培養が必要であったため、安定した実験系を確立するのに時間が掛かった。そのため、分化後に使用する予定であった高額な測定キットなどの購入が少なかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
安定した実験系を確立後、今まで得られた結果をさらに詳細に調べるため、他種の骨芽細胞や試薬を購入し研究を進めていく予定である。ヒトの骨芽細胞の購入と培養維持や測定キットには、次年度使用額と来年度に見積もった予定通りの研究費が掛かると考えられる。
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