2016 Fiscal Year Research-status Report
筋蛋白質分解経路と合成経路のクロストーク解明による新規サルコペニア治療法の創成
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16K09230
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉川 賢忠 東京大学, 医科学研究所, 講師 (70396878)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 高齢者 / サルコペニア / グルココルチコイドレセプター / mTOR / 骨格筋萎縮 / ステロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者に発症する筋萎縮「サルコペニア」の病因に関しては様々な報告があるが決定的なものはなく、多くのプロセスの帰結と考えられつつある。すなわち、サルコペニアは加齢に伴う多種多様な内的環境の変容によって「骨格筋量を個体レベルで規定するセットポイント」が萎縮側にリセットされた状態と理解可能である。ここで、成人では骨格筋量は筋蛋白質分解と合成のバランスによって規定される。近年申請者らは、かかるバランスはグルココルチコイドレセプターとmTORを基軸とした筋蛋白質分解経路と合成経路の精緻なクロストークによって制御され、このクロストークは筋量制御に加え全身の代謝調節にも関与する生命維持にきわめて重要なシステムであることを明らかにした。そこで、このクロストークがセットポイントを規定する主要なシステムと捉え、様々な生理的病的状態におけるクロストークの変容をその調節因子の同定や調節機構の解析から明らかにし、その成果を新規サルコペニア治療法創成に展開することを目的とする。 平成28年度は、野生型および骨格筋特異的GR破壊マウス(GRmKO)を用い、様々な内的・外的要因により骨格筋の萎縮や肥大を呈する複数のモデルマウスを比較解析することで、セットポイントの調節因子の絞り込みを進めた。すなわち、「個体の活動状態の変化により肥大あるいは萎縮を生じた骨格筋」、「栄養状態を著しく変動させた個体における骨格筋」、「個体の疾病状態により萎縮を生じた骨格筋」、を採取して、オミクス比較解析を行い、GR-mTOR軸を中心とした筋蛋白質分解系と合成系経路のクロストークの変容の詳細な解析をすすめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
クロストーク調節の中心分子およびその下流でセットポイントを規定する分子を同定するため、得られた各骨格筋におけるmRNA発現をDNAマイクロアレイ、RNA-seq法により解析をすすめた。筋重量増加へとセットポイントが変動している肥大筋、および筋重量減少へとセットポイントが変動している萎縮筋、肥満モデルマウス由来筋、および絶食操作を行ったマウス由来の筋で共通して変動し、かつ筋量増加・減少両群における発現が逆相関している遺伝子群を抽出することで、候補遺伝子を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
蛋白質発現をプロテオミクスおよびリン酸化プロテオミクスにより解析し、セットポイント調節の候補蛋白質を抽出する。また、これまでの結果を統合し、筋量制御を規定する遺伝子、蛋白質を絞り込み、候補分子・シグナル経路のloss/gain of function実験から、候補分子・シグナル経路のセットポイント規定機能を検証する。さらに、野生型およびGRmKOの老齢マウス(20ヶ月齢)において、これまでに得られた候補分子、その周辺分子、シグナル経路の挙動、GR-mTOR軸の変容を明確にする。
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[Journal Article] The effects of bolus supplementation of branched-chain amino acids on skeletal muscle mass, strength, and function in patients with rheumatic disorders during glucocorticoid treatment.2016
Author(s)
Yoshikawa N, Shimizu N, Uehara M, Oda Y, Matsumiya R, Matsubara E, Kobayashi H, Hosono O, Kuribara-Souta A, Baba H, Nagamura F, Kiryu S, Tanaka H.
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Journal Title
Modern Rheumatology
Volume: Epub2016, 印刷中
Pages: Epub2016, 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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