2017 Fiscal Year Research-status Report
葛根湯併用による安全かつ効率的な経口免疫療法による食物アレルギーの治療方法の確立
Project/Area Number |
16K09234
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
山本 武 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 助教 (70316181)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 食物アレルギー / 葛根湯 / 経口免疫療法 / 制御性T細胞 / 腸管粘膜免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
食物アレルギーを安全にかつ効率良く治療を行うために、抗原摂取によりアレルギー性消化器症状を発症する食物アレルギー病態モデルマウスに対して経口免疫療法を行う経口免疫療法モデルを作製し、葛根湯を併用した治療法の効果とその機序の検討を行った。経口免疫療法のみの治療よりも、葛根湯を併用した治療が腸管でFoxp3+制御性T細胞を増加させ、腸管粘膜免疫系のTh2免疫応答の過剰な亢進を改善し、食物アレルギーを有意に改善することを明らかにした。また、経口免疫療法や葛根湯併用療法によりアレルギー症状発症に関与する粘膜型マスト細胞が腸管で増加したが、葛根湯併用療法では粘膜型マスト細胞の脱顆粒によって増加する血漿中mouse mast cell protease-1量が減少した。このことから、葛根湯併用療法により粘膜型マスト細胞の脱顆粒が抑制され、食物アレルギー症状の発症が抑制されたことを明らかにした。 葛根湯併用療法の治療効率改善の作用を示す葛根湯の有効成分を検討するために、葛根湯を構成する生薬の各単味エキスを経口免疫療法と併用して検討を行った。しかし、葛根湯併用療法と同様のアレルギー症状発症抑制効果は得られなかったため、葛根湯併用療法による治療効果は単独の生薬や成分による作用ではなく、複数の生薬エキスによる複数の機序を介した作用によることが示唆された。 さらに、葛根湯併用療法による治療効果が長期間維持されるかを明らかにするため、治療後に抗原除去期間を経た後に抗原の投与を行いアレルギー症状の発症率について検討を行った。経口免疫療法のみでは抗原除去期間後に再びアレルギー症状を発症したが、葛根湯併用療法では治療効果が維持されアレルギー症状発症率は低かった。従って、経口免疫療法と葛根湯の併用療法による原因抗原に対する耐性獲得の可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
食物アレルギー病態モデルマウスを用いて経口免疫療法の病態モデルを作製し、経口免疫療法に葛根湯を併用した治療法の効果および機序の検討を行った。そして、これらの研究成果を学会等で報告した。研究は当初の計画通り順調に進捗し、ほぼ満足できる達成度であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
経口免疫療法の病態モデルを用いて、経口免疫療法と葛根湯の併用療法は、腸管のFoxp3+制御性T細胞の誘導を介して食物アレルギーの治療効率を上げることを明らかにした。網羅的遺伝子解析によりレチノイン酸代謝関連遺伝子の発現量が変化することを明らかにしていることから、腸管でのレチノイン酸産生がFoxp3+制御性T細胞の誘導に関与することが示唆され、今後食物アレルギーの耐性獲得に対しての腸管でのFoxp3+制御性T細胞の誘導に対するレチノイン酸の役割また誘導されるFoxp3+制御性T細胞のサブタイプについて検討を行う予定である。また、Foxp3+制御性T細胞が結合組織型マスト細胞の脱顆粒を抑制することが報告されていることから、粘膜型マスト細胞の脱顆粒の抑制にもFoxp3+制御性T細胞が直接的に関与することが示唆される。そこで、Foxp3+制御性T細胞による直接的な粘膜型マスト細胞の脱顆粒抑制機序について、骨髄由来粘膜型マスト細胞を用いたin vitro系を確立し検討を行う予定である。 これまでの臨床研究では、経口免疫療法を終了後に再び原因抗原に対する耐性(脱感作)が失われ、食物アレルギーを発症する症例が報告されており、治療後の経過観察が必要とされている。葛根湯併用療法は経口免疫療法のみよりも抗原除去期間後の耐性が維持される結果を得ている。そこで、本病態モデルにより長期の耐性獲得について詳細な病態解析や治療機序の検討を行う予定である。また、葛根湯併用療法でも完全には治療できていないことから、葛根湯併用後に葛根湯を長期間投与によるなど長期間の治療を行うことにより治療効率をさらに上げることが可能か検討を行う予定である。
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