2016 Fiscal Year Research-status Report
高齢糖尿病患者における併存疾患別の血糖管理目標と薬剤選択の最適化
Project/Area Number |
16K09237
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩橋 博見 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60397627)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今川 彰久 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80373108)
木村 武量 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (70770171)
小澤 純二 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80513001)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝癌 / 糖尿病治療法 / 血糖コントロール / 生命予後 / 肝癌再発 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の糖尿病治療において、血糖管理目標値は、年齢や罹病期間、血管合併症の程度、重大な併存疾患、予想される余命等を考慮し個々の患者で設定すべきであるとされているが、個々の患者で具体的にどのように血糖コントロール目標を設定すべきか、またどのような薬剤が適切かについては明確には示されていない。本研究では重大な併存疾患を有する高齢糖尿病患者において、どのような薬剤で、どの程度の血糖管理目標を設定することが、合併症や生命予後、ひいては患者QOLに寄与するのかについて明らかにすることを目的とする。初年度には重大な併存疾患として、肝臓がんを取り上げて調査した。 大阪大学医学部附属病院通院中の2型糖尿病患者で、当院で肝癌初回治療を行った患者93名を対象に、肝癌治療後の糖尿病治療法や血糖コントロールと種々の肝がん関連項目を調査し、死亡および肝癌再発と関連する因子をCOX比例ハザードモデル解析を用いて検討した。肝癌再発と関連する因子としては、糖尿病治療法や血糖コントロールは抽出されず、腫瘍数や腫瘍マーカー、肝癌治療方法などの肝癌関連因子のみが抽出された。一方、全死亡と関連する因子としては、肝癌治療方法や観察期間中の肝機能のほかに、糖尿病治療法(インスリン使用の有無)や観察期間中の随時血糖値が抽出された。このことは、血糖コントロールの程度や、選択される糖尿病治療法が、肝癌合併糖尿病患者の生命予後に影響を与えている可能性を示している。観察研究であるため、その因果関係は明らかでないが、少なくとも、肝癌合併糖尿病患者において糖尿病の治療法や血糖管理の程度が、生命予後に関連することが明らかとなり、糖尿病治療の重要性が示唆された。尚、今回の対象患者の平均年齢は68歳であったが、今後症例数を増やし、年齢層別のサブ解析を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
阪大病院に通院加療中の肝癌を合併された糖尿病患者を対象に、93例と比較的少数での解析ではあるが、一定の結果を得ることができ、今後の研究の方向性を確認しえた。しかしながら、うつ病や認知症合併の患者については、まだ手付かずの状態である。また、患者QOLについての調査はこれからであるが、こちらは一般の糖尿病患者における糖尿病治療満足度調査をすでに実施しており、併存疾患を有する患者の対照となるデータが蓄積されつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の結果では、肝癌の再発には、糖尿病治療は関係しないが、生命予後に関係することが示された。しかしながら、肝癌の治療法によっても、その生命予後は大きく左右されていた。今後は、肝癌の初回治療法別にも解析ができるように、対象患者数を増やしていく予定である。阪大病院単施設での患者数では、不足することが予想されるため、他施設にも研究協力を呼びかけていく方針である。また、うつ病や認知症合併の糖尿病患者についても今後、調査を開始していく予定である。一般の糖尿病患者における糖尿病治療満足度と使用薬剤との関連についての調査も継続していく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、アンケート調査協力やアンケート調査入力のための人件費および謝金を支出する必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、新たなアンケート調査入力や、カルテ入力に伴う人件費が必要となる予定。また、併存疾患合併糖尿病患者における臨床検査費用が生じる可能性もある。
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