2017 Fiscal Year Research-status Report
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16K09240
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
杉本 利嗣 島根大学, 医学部, 教授 (00226458)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金沢 一平 島根大学, 医学部, 講師 (50452553)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 筋芽細胞 / 骨代謝 / 筋肉 / IGF-I / AGEs / オステオカルシン / オステオグリシン / スクレロスチン |
Outline of Annual Research Achievements |
骨と筋肉からは様々なホルモンが分泌され、相互に影響しあうことが報告されている(筋骨連関)。本検討では骨から分泌されるホルモンと筋組織との関連性をin vitro、臨床データを用いて検討することを目的とした。 ①スクレロスチンの筋芽細胞分化への影響を検討したが、明らかな筋分化マーカー発現への影響は認めなかった(昨年度報告)。 ②骨芽細胞から分泌されるオステオカルシンが筋細胞でのインスリンシグナルを増強すると報告されている。我々は筋芽細胞株C2C12細胞にもオステオカルシンの受容体であるGPRC6Aが発現することを見出し、オステオカルシンが筋分化に影響する可能性を想定し検討を行った。オステオカルシン添加によりわずかに筋分化因子MyoDの発現増強が認められたものの、myogeninなどの他の因子に影響は見られなかった。今回のin vitroでの検討では、オステオカルシンが筋分化に強く影響している可能性は低いと考えられた。 ③Insulin-like growth factor-I (IGF-I)は骨局所でも産生される増殖因子であり、autocrine/paracrine的に骨代謝を制御する。一方、骨で産生されるIGF-Iが近傍組織である筋肉にも影響する可能性がある。また、近年サルコペニアの原因の一つとしてadvanced glycation end roducts (AGEs)が関与している可能性が考えられている。そのため、IGF-I、AGEs、IGF-I+AGEsの筋分化への影響を検討した。IGF-Iは有意に筋分化マーカー発現を増強した。さらに、AGEsは筋分化を抑制したが、IGF-Iの同時添加によりAGEsの作用は阻害された。 ④臨床研究により、筋マーカーであるオステオグリシンと骨密度に有意な負の相関があり、オステオグリシン高値が椎体骨折リスクと関連することを見出した(昨年度報告)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スクレロスチンとオステオカルシンの筋芽細胞への影響は、当初の想定に反して筋分化に強い影響はないと考えられる結果を得た。このため、現在はIGF-Iに焦点を当て、1)IGF-Iの筋分化に与える影響、2)AGEsによる筋分化阻害をIGF-Iが解除しうるかという観点で検討を進めている。現時点で、IGF-Iが筋分化を増強し、AGEsによる筋分化阻害作用を解除しうる結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、IGF-I、AGEs、IGF-IとAGEs同時添加による筋分化への影響を再確認し、さらに筋芽細胞増殖能やアポトーシスに与える影響も検討する予定である。また、PI3KやAktなどのIGF-Iシグナルが筋分化に重要であることは知られており、AGEsがIGF-Iシグナルに影響するかを検討する。さらに、高血糖はAGEs受容体であるreceptor for AGEs (RAGE)発現を上昇してAGEs作用を増強することも報告されており、高血糖+AGEsの筋分化への影響、IGF-Iがこれらの作用を解除するか否かについても検討する予定としている。 近年、我々は筋細胞に発現するFAM210Aが筋分化に重要であることを見出し、さらに筋細胞FAM210Aが骨代謝も制御する可能性を報告した(Proc Natl Acad Sci USA 2018)。今後、オステオカルシン、スクレロスチン、IGF-I、AGEsなどがFAM210A発現に影響するか否かなどについても探索することを予定している。
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Causes of Carryover |
研究計画は順調に進んでおり、次年度繰越金の190円も来年度内に使用する予定である。
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