2017 Fiscal Year Research-status Report
患者レジストリーを用いた遺伝性ならびに非遺伝性血管性浮腫の病態解明
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16K09246
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
堀内 孝彦 九州大学, 大学病院, 教授 (90219212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木本 泰孝 九州大学, 大学病院, 助教 (40735487)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝性血管性浮腫 / C1インヒビター / 患者レジストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の成果は1)新しい患者登録ならびに遺伝子解析システムの展開、2)遺伝性血管性浮腫患者の病因遺伝子別の症状、誘因や治療反応性などの臨床データの解析、3)遺伝性血管性浮腫患者においてアジア初の新たな遺伝子異常の同定があげられる。 まず1)患者登録システムの展開については、より公的な登録システムへと発展させたことが大きい。従来、私どもはNPO法人CREATEで2011年からわが国最初で唯一の事業としての血管性浮腫とくに遺伝性血管性浮腫患者の臨床データ集積、遺伝子解析を行ってきた。しかしながらより公的な機関である一般社団法人日本補体学会と共同で患者登録システムを運用することとした。同時に日本補体学会が進めている次世代シークエンサー(NGS)を用いた補体・凝固線溶関連の網羅的遺伝子解析のシステムも施行できる体制とした。2)遺伝性血管性浮腫の臨床データの解析は、C1インヒビター(C1-INH)遺伝子異常がある遺伝性血管性浮腫患者(HAE-C1-INH)とC1-INH遺伝子異常がなく原因が不明(Unknown)であるが遺伝性血管性浮腫を呈する患者(HAE-Unknown)に分けて検討した。HAE-UnknownはHAE-C1-INHに比較して有意に顔面、咽頭、喉頭などの浮腫発作が多いこと、発症年齢がより高いこと、発作の誘因がより多く見られることが明らかになった。3)の遺伝子異常については従来C1-INH遺伝子異常のみ報告されてきたが、HAE-Unknownについては文字通り原因が不明であった。近年欧米で凝固XII因子をはじめいくつかの遺伝子異常が同定されつつある。アジア人ではHAE-Unknownの原因遺伝子は同定されていなかったが今回我々が血縁関係のない2家系について初めて明らかにした。この遺伝子異常については現在論文準備中であるため現時点では詳細は差し控えさせていただきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NPO法人CREATEが運営してきた患者レジストリーは、今回の研究によって遺伝性血管性浮腫の臨床ならびに研究を統括できるアジア初の学会主導の公的組織へと発展した。この展開の過程では、日本補体学会での議論、遺伝性血管性浮腫の担当専門医のチームの編成と連絡体制の整備、REDCapを用いた患者登録システムの構築、関連する各施設での倫理委員会の承認、解析する遺伝子の選定、遺伝子解析システムの運用方法の確定、それを担当する検査会社との業務提携のすり合わせ、臨床検査結果の評価、報告方法の確立、遺伝子解析結果の評価方法ならびに評価者の選定、遺伝子カウンセリングまで含めた相談窓口の開設、結果の報告、社会への還元の準備、学会での報告や論文化の展開、全体の事業に必要となる多額の資金の捻出をどうするかなど多くの克服すべき課題があった。我々は日本補体学会(理事長若宮伸隆旭川医大教授)ならびに理事の先生方と緊密に連携してこの課題を一つ一つクリアしながら新たな公的患者レジストリーを完成した。我々が運用を始めた学会主導の患者レジストリーは、遺伝性血管性浮腫の臨床、基礎両面でのアジアでの研究センターに発展すると考えられ、患者解析のプラットフォームを確立したという点については十分当初の目的を達成できたと確信している。また既存のNPO法人CREATEに蓄積されたデータを用いてHAE-C1-INHとHAE-Unknownに分けて臨床データを解析した。アジアからは初の研究となった。また遺伝子解析を行うことによってHAE-Unknownの原因となる遺伝子異常を同定することができた。従来HAE-Unknownの遺伝子異常は明らかにされておらず特にアジアからの報告は皆無であった。こうした点を考えると、我々の研究は臨床的にもまた基礎的にもHAE-C1-INHならびにHAE-Unknownの研究に寄与したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は一般社団法人日本補体学会によるHAE登録システムによって日本からHAEについての研究成果が発信されていくと思われる。すなわち、HAE-C1-INH、HAE-Unknownそれぞれの臨床症状、経過、治療薬への反応性について明確になると考えられる。そのためには継続的、定期的な患者情報の入力が必要となってくると思われる。日本補体学会のホームページをはじめとしてネットを利用して広く遺伝性血管性浮腫の啓発、患者登録推進を呼びかけることが肝要である。さらに堀内は厚労省「原発性免疫不全症候群の診断基準・重症度分類および診療ガイドラインの確立に関する研究」研究班(主任研究者野々山恵章教授)の班員として先天性補体欠損症、遺伝性血管性浮腫を担当しており、研究班と連携して患者レジストリーを発展させていきたい。さらに堀内が理事長をつとめるNPO法人CREATEは遺伝性血管性浮腫患者会「くみーむ」の運営、補助も行っており、患者会を通してこの患者レジストリーを宣伝、充実させていけると思われる。 遺伝子解析についていえば補体・凝固線溶関連の136遺伝子の網羅的遺伝子解析のシステムを利用して、HAE-C1-INHに関してC1-INH遺伝子異常以外の疾患の重症化、修飾にかかわる遺伝子多型、変異が明らかになる可能性がある。実際HAE-C1-INHにおいては、別の変異を有する家系間のみならず、同じ遺伝子異常を有する家系内においてすら臨床症状に差異があることが知られていることから新たな疾患修飾遺伝子の解明につながると考えられる。HAE-Unknownについては、今回明らかになった遺伝子以外にも別の新たな遺伝子異常が存在することが明らかになる可能性が高い。HAE-Unknownは2000年に提唱された比較的新しい疾患概念であり欧米での研究が先行していた。日本でも遅ればせながら研究を展開できると考えられる。
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Causes of Carryover |
前年度に研究費を使いきれなかったため次年度に繰り越した。 本年は、最終年度となるので、成果を発表する旅費等で使用する予定がある。
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[Journal Article] A novel scoring system based on common laboratory tests predicts the efficacy of TNF-inhibitor and IL-6 targeted therapy in patients with rheumatoid arthritis: a retrospective, multicenter observational study2017
Author(s)
Nakagawa J, Koyama Y, Kawakami A, Ueki Y, Tsukamoto H, Horiuchi T, Nagano S, Uchino A, Ota T, Akahoshi M, Akashi K
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Journal Title
Arthritis Res. Ther
Volume: 19
Pages: 185
Peer Reviewed