2016 Fiscal Year Research-status Report
アルツハイマー病の発症機構におけるNeurovascular Unitの関与
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16K09248
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
木村 成志 大分大学, 医学部, 准教授 (30433048)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花岡 拓哉 大分大学, 医学部, 講師 (40433057) [Withdrawn]
麻生 泰弘 大分大学, 医学部, 助教 (80555194)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 軽度認知障害 / アミロイドPET / 大脳白質変性 / Neurovascular Unit / Blood-brain barrier |
Outline of Annual Research Achievements |
1年間でPetersenによるAmnestic mild cognitive impairment(amnestic MCI)の診断基準を満たす対象者を107例(男:女= 45:62,平均年齢 74.8歳)登録した。この内、79例(男:女= 36:43,平均年齢 74.4歳)に対してMMSE、ADAS、WMS-Rによる心理検査および3.0TMRI、PIB-PET、FDG-PETによる画像検査が施行可能であった。これまでに以下の成果が得られた。 ①アミロイドPET陽性のMCI者(MCI陽性群)は47例(男:女= 21:26,平均年齢 74.8歳)で全体の59%であり、アミロイドPET陰性のMCI者(MCI陰性群)は32例(男:女= 15:17,平均年齢 73.7歳)であった。これにより認知症発症の前段階であるMCIでは、約6割に脳内アミロイド沈着を認めることが明らかとなった。 ②3.0TMRIのT2強調画像における大脳白質病変(white matter lesions: WMLs)をFazekas分類で評価した結果、WMLsはMCI陽性群47例中18例(38.3%)、MCI陰性群32例中13例(40.6%)に検出された。MCIにおけるWMLsの合併頻度は、アルツハイマー病におけるWMLsの合併頻度(58%)よりも低値であることが明らかとなった。 ③WMLsと血管危険因子および認知機能との関連を検討するため、MCI陽性群およびMCI陰性群の各群をWMLsの有無により2群に分類し、各因子を比較検討した。年齢、性別、教育歴に有意差はなかった。しかし、WMLsを有する群では高血圧の頻度が有意に高く、ADASやWMS-Rによる認知機能が有意に低値であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年間で対象者を107例登録し、この内79例に対してMMSE、ADAS、WMS-Rによる心理検査および3.0TMRI、PIB-PET、FDG-PETによる画像検査を実施し、データベース化することができた。これまでの進捗状況から研究期間中に目標症例数の145名に到達することが可能である。3.0T-MRIの拡散テンソル画像によるfactional anisotropy (FA)値の測定方法を確立した。これにより大脳白質変性の定量的評価が可能となった。現時点では、Fazekas分類を用いて半定量的に大脳白質変性を評価し、解析を実施した。これによりMCIにおけるWMLsの合併頻度は、将来的にアルツハイマー病を発症する危険性が高いMCI due to ADで38.3%であることが明らかとなった。さらに、WMLsを有する群では高血圧の頻度が有意に高く、ADASやWMS-Rによる認知機能が有意に低下していた。PIB-PET 画像において前頭葉、側頭頭頂葉外側部、楔前部に関心領域を設定し、小脳皮質の測定値を基準とした対小脳比(mean cortical standardized uptake value ratio <SUVR>)を算出する方法を確立した。これにより脳内アミロイド沈着量を定量化することが可能となった。これまでにMCI陽性群の11例、MCI陰性群の10例に対して脳髄液検査を施行し、マルチプレックス分析システムによりNVUの破綻に関連する分子としてMMPとTIMPの測定を行った。現時点ではWMLsを有する群で有意に異常を示す分子は認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
拡散テンソル画像のFA値、NVUの破綻および大脳白質変性に関連する血液・脳脊髄液バイオマーカーを測定し、ADのバイオマーカーにより分類した2群間で比較検討する。さらに、NVUの破綻と大脳白質変性のバイオマーカーおよびFA値の相関を解析する。NVUの破綻に関連する分子としてBlood-brain barrier(BBB) marker (Albumin, Cyclophilin A, MMP, TIMP)、pericyte marker (β-type platelet-derived growth factor receptor)、endothelial marker (Vascuolar Cell Adhesion Molecule 1)、astrocyte marker (Soluble Protein-100B)を測定する。大脳白質変性の評価としてmyelin basic protein、myelin associated glycoproteinの測定を行う。MCI due to AD群とMCI due to non-AD群で拡散テンソル画像によるfactional anisotropy (FA)値、NVUの破綻および大脳白質変性に関連する血液・脳脊髄液バイオマーカーをMann-Whitney U-testで比較する。さらに、各群と健常高齢者群で同様の検討を行う。また、NVUの破綻および大脳白質変性に関連する血液・脳脊髄液バイオマーカーおよびFA値の相関をSpearman’s correlation coefficient by rankで解析する。
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Causes of Carryover |
初年度は、対象者のリクルートおよび心理検査、画像検査を主体に研究を実施した。血液検査と脳脊髄液検査は画像検査実施時に採取することにしている。当施設における研究のための画像検査は、週4例に対して実施可能である。画像検査および血液・脳脊髄液の採取は予定通りに進捗している。血液・脳脊髄液中の標的分子は、マルチプレックス分析システムおよびELISA kitにより測定する。いずれも全ての対象者において検体採取および保存が完了した後に測定することで費用が軽減されるとともにデータの精度も向上。また、マルチプレックス分析キットとELISA kitには使用期限があるため、測定可能となった時点で購入する必要がある。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、アルツハイマー病のバイオマーカであるAβ42、リン酸化タウ蛋白(181P)、総タウ蛋白加えてNVUの破綻に関連する分子としてBlood-brain barrier(BBB) marker、pericyte marker、endothelial marker 、astrocyte marker、myelin basic protein、myelin associated glycoproteinを測定する。血液検体に関しては、全ての対象者で採取・保存が完了しており、測定可能となっている。脳脊髄液は、次年度中に検体採取を完了する予定である。
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