2017 Fiscal Year Research-status Report
進行癌の予防と治療補完療法の研究:発症前診断法及び癌抑制機構再活性化の検討
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16K09258
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
田中 朝雄 東海大学, 医学部, 講師 (50192175)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 政光 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (00182460)
鈴木 孝良 東海大学, 医学部, 教授 (40287066)
鬼島 宏 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90204859)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌補助療法の確立 / 槐耳(カイジ) / 遺伝子改変ショウジョウバエ / メタボローム解析 / Hippo signaling pathway / 量依存効果 / 生体時計の逆行 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエ検証実験 用いた遺伝子改変モデルは、多数の刺激伝達経路を統御するHippo signaling pathwayの中の、癌細胞において特に最終的な作用結実点、核内転写調節のかなめとなるYorkieを暴走させる癌モデル、Yki:V5S168Aミュータントである。Hippo signaling pathwayによる統御系は、中枢神経系、心筋(平滑筋)、消化管、内分泌系においてその機能が顕著であり、これらの臓器は槐耳効果を観察する臓器と一致している。実験系は単純であり、遺伝子異常ミュータントを食餌の上で産卵させ、孵化した幼虫は一定濃度で槐耳を含む食餌にて飼育、1週間程度で成虫となる。遺伝子異常は、特に複眼形成(細胞周期の同調効果を反映)に表現されるため、形態観察にて効果の質的判定が可能である(rough eye formationの比較)。 その結果、仮説は実証され、カイジが投与量に依存して、ショウジョウバエモデルで暴走した転写調節・rough eye formationが改善・修復された。原因と結果の単純帰結としてデータが得られた。これは、量依存という点からも臨床実地データの見事な再現であった。その腫瘍細胞におけるHippo signaling pathwayの癌抑制遺伝子内変異を修復し、癌細胞特異的細胞死を誘発する。この癌抑制遺伝子機能の再活性化は、担癌マウス・ラットの腫瘤形成抑制・腫瘤消失現象とも合致している。 メタボローム解析 癌治癒のプロセスは、神戸大学メタボローム解析班との連携により、カイジ投与が癌発生検体の生体時計を発生開始時期まで巻き戻すことにより惹起されることも同時に解明した。これは、既に発生・胎児期におけるショウジョウバエメタボローム解析データが完備されていたため、単純比較で得られた結論であり、癌治療が異常―正常という直線的な方向性ではなく、まず胎児期・発生期への生体時計の逆行を経て、幹細胞の安定した正常分化から開始されるという貴重な所見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要内容の成果を'Tanaka, T., Suzuki, T., Nakamura, J., Kawamura, Y., Sadahiro, S., Kijima, H., Yamamoto, I., Vo, N., Yamaguchi, M., Irino, Y., Shinohara, M., Wei, D. & Tanaka, M. Huaier Regulates Cell Fate by the Rescue of Disrupted Transcription Control in the Hippo Signaling Pathway. Arc. Clin. Biomed. Res. 1 (4) 179-199, 2017.'に掲載した。 その内容は、槐耳(カイジ)を肝癌・乳癌などの抗癌剤として認可している中国で非常に注目され、昨年度だけで山東省済南市「国際乳癌シンポジウム」、広東省広州市「広東省医学会2017 第七次肝胆膵外科学会学術会議」、湖南省長沙市「湖南省健康管理学会 乳腺甲状腺健康管理学会」、上海市「原発性肝癌診療ガイドラインおよび関連研究成果報告検討会」、北京市「中国医療保険国際交流促進会」、遼寧省瀋陽市「海峡両岸医療保健交流協会」および大連市「東北介入フォーラム-2017」で、連携研究者・田中真奈実(ブラディオン医科学研究所)とともに招待講演を行った。 さらにこの出張中、槐耳(カイジ)製造元の盖天力製薬との共同研究開始や、世界最大の遺伝子解析会社のBGI(北京基因組研究所)幹部との共同研究の打合せ、上海復旦大学の肝癌診療ガイドライン作成責任者の蔡教授、遺伝子解析トップの王教授と共同研究に向けての会談を行った。 また、中国滞在中、多くの院士(日本の学士院会員)、景在平院士や劉允怡院士、程院士他を紹介され、中国の医学研究トップとの共同研究の道筋を開くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究実績の概要内容の成果を鑑み、臨床研究「槐耳(カイジ)の抗癌効果の分子基盤解明」を開始した。対象は、乳癌や大腸癌、肝癌、膵癌、胆管癌、前立腺癌などの進行癌患者ボランティア40名で、参加同意後より、カイジ1日20gの服用を開始し、服用3ヶ月後まで続ける。採血(2ml)は、カイジ服用開始時と1ヶ月後、3ヶ月後とする。同一個人の治療前・治療後という比較こそが、本研究の目的に即した解析可能な内容である。遺伝子発現網羅解析は、幸いなことに、近年の技法の進歩により、受託解析が充実しており、患者検体(血液)の直接送付により、フローチャートにある解析が一気に完遂できる。ただし、病期・年齢等を同一とする症例数の確保にはトータルで時間がかかり、また、解析費用が非常に高額であることから、まずは少数例におけるパイロット実験を行い、焦点を当てる変化を検知することから開始する。 評価項目 mRNAライブラリーについては、mRNAの研究に重点を置く。データ分析は、配列決定データ処理および基本的配列決定データ品質管理、新規転写物の予測、遺伝子の差次的発現分析を含む。上方制御された遺伝子および下方制御された遺伝子のアノテーション(注釈)および濃縮分析には、Gene Ontology(GO)およびKEGG経路データベースが使用される。 小型RNAライブラリーの場合、データ解析には配列決定のデータプロセスと塩基配列データQC、ゲノムにわたるsmall RNA分布、rRNA、tRNA、snRNAとsnoRNAに対するアラインメント(整列)、既知のmiRNA発現パターンの構築、予測新規miRNAおよびそれらの二次構造の研究miRNAの発現パターンに基づいて、GO/KEGGアノテーション(注釈)および濃縮だけでなく、異なる発現解析も行う。微妙な発現結果とsmallRNAとmRNAの予測結果に基づいて、関連するsmallRNAとmRNAを同定するための統合解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成29年度に神戸大学メタボローム解析班に委託した研究「進行癌の予防と治療補完療法の研究―ショウジョウバエモデルを用いたPS-T療法の効果発現機序の解明」が予想外に一度の実験で良好な結果を得られたため、支出する予算が少なくて済んだため。 また、平成29年度発表した論文'Tanaka, T., Suzuki, T., Nakamura, J., Kawamura, Y., Sadahiro, S., Kijima, H., Yamamoto, I., Vo, N., Yamaguchi, M., Irino, Y., Shinohara, M., Wei, D. & Tanaka, M. Huaier Regulates Cell Fate by the Rescue of Disrupted Transcription Control in the Hippo Signaling Pathway. Arc. Clin. Biomed. Res. 1 (4) 179-199, 2017.'の論文掲載料も安く済んだ。そしてその論文がカイジ研究が盛んな中国で非常に好評なため、招待講演依頼が多く、そのため当初計上していた海外での学会発表のための支出が抑えられた。 さらにその成果を鑑み、臨床研究を開始し、そのためもRNA網羅的シークエンス解析に多くの予算の支出が予想されるために、研究最終年度の平成30年度に予算を廻すことになった。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Huaier Regulates Cell Fate by the Rescue of Disrupted Transcription Control in the Hippo Signaling Pathway.2017
Author(s)
Tanaka, T., Suzuki, T., Nakamura, J., Kawamura, Y., Sadahiro, S., Kijima, H., Yamamoto, I., Vo, N., Yamaguchi, M., Irino, Y., Shinohara, M., Wei, D. & Tanaka, M.
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Journal Title
Archives of Clinical and Biomedical Research
Volume: 1
Pages: 179-199
DOI
Open Access
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