2016 Fiscal Year Research-status Report
自然免疫の機能低下を誘起する慢性ストレスの分子基盤の解明
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16K09271
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
船上 仁範 近畿大学, 薬学部, 講師 (70449833)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 慢性ストレス / 自然免疫 / 肺胞マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
現代病であるストレスは日常生活から切り離すことは困難であり,全身にわたる様々な症状の発症や疾患を悪化させる誘因となっている。ストレスに対する応答機構は全身における恒常性の維持に必須である神経系と内分泌系が中心となり制御している。免疫系は神経系,内分泌系と連動しており,ストレスによる影響を受けるが,ストレス関連疾患の発症にどのように関与しているか詳細は不明である。そこで慢性ストレス状態が免疫系,特に自然免疫に影響を与える可能性について検討した。 基礎実験には慢性ストレス状態にあるSARTストレスマウスを使用した。SARTストレスは室温24℃・庫内温度4℃の動物飼育チャンバーに,マウスを毎日9時から16時までの間は1時間ごとに両ケージ間に移し替え,16時から翌朝9時までは4℃のチャンバー内で飼育する環境温度ストレスに7日間曝した。 まず, T細胞の分化,成熟に関与する胸腺及びリンパ球の成熟や免疫応答の場となる脾臓の湿重量を測定したところ,SARTストレスマウスの胸腺及び脾臓の湿重量は低下し,萎縮が認められた。次にこのマウスの気管支肺胞洗浄液を採取し,肺胞マクロファージの貪食能及び炎症性サイトカインIL-6,IL-1β,TNF-αの産生能に対するSARTストレスの影響を検討したところ,SARTストレスマウスでは,非ストレスマウスと比較して,貪食能及びサイトカイン産生能の低下が認められた。 以上の結果から,慢性ストレス状態が一つの要因となり肺胞マクロファージの機能を低下する環境を誘発し,自然免疫能を低下させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で示したとおり,H28年度の研究目的は「慢性ストレスよる慢性ストレスマウスにおける自然免疫能の状態」を検討することであった. 検討すべき項目に対する成果はすべて得られており,H28年度の目的はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の基礎実験により,慢性ストレス状態が免疫担当細胞の1つであるマクロファージの免疫機能の低下に関与することを見いだした。H29年度はこの肺胞マクロファージについて,慢性ストレスによる肺胞マクロファージを介した自然免疫機能の低下に対する自律神経系の影響を検証する。 これらの研究について,得られた結果をとりまとめ,研究成果の発表並びに論文投稿を行う。
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Causes of Carryover |
平成28年度に交付された直接経費はおおむね消費していると考えている。最終月に購入していた材料の振込が遅延しため,残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
購入物品の納品は完了しており,振込は来年度に実施される。来年度の使用計画に大幅な変更はない。
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Research Products
(2 results)