2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K09275
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
安藤 哲也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 心身医学研究部, 室長 (50311428)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡 晃 東海大学, 付置研究所, 講師 (80384866)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エクソームシークエンシング / 摂食障害 / 家族症例 |
Outline of Annual Research Achievements |
高い遺伝率で知られる摂食障害は、ゲノムワイド関連解析(GWAS)が行われたが、その多くを説明できる原因変異は見いだされていない。一方、統合失調症や自閉症などの精神神経疾患において、近年登場した全エクソンをシークエンシングするエクソーム解析により、多くの原因変異が同定されつつあるが、摂食障害において、このような報告はこれまでのところ皆無である。そこで本研究の目的は、すでに試料収集済みである、摂食障害家族症例を対象に、エクソーム解析を行うことにより、摂食障害発症に寄与する原因変異ならびに遺伝子を同定することである。 そこで、予備的知見を得るため、摂食障害家族症例を対象としてエクソーム解析を実施し、罹患者で共有する極めて稀な機能性変異の同定を目指した。その結果、統合失調症などを含む他の精神疾患ですでに明らかになっている複数の疾患原因遺伝子上(神経伝達物質のレセプターや抑うつ障害の原因遺伝子)に、このような変異が認められた(unpublished data)。したがって、エクソーム解析が摂食障害の解析においてもきわめて有望であると期待された。しかし少数症例での解析であるため、これらが真の疾患原因変異と断定することはできない。そこで、本研究は多数の家族症例の解析を加えることにより、複数の家族で同一遺伝子上にある原因変異の同定を目指すこととした。本研究のこの初年度までに、摂食障害5家族を対象に、罹患者10名および非罹患者11名の合計21名のエクソームシークエンシングが完了した。なお、エクソン断片濃縮(ライブラリ調整)にはアジレント社のSureSelect Human All Exon V5を使用し、イルミナ社のHiSeq2000にてシークエンシングを実施した。平均Depthは全個体70-80以上である。この値はシークエンシング対象領域のシークエンシングカバー率が上限に到達するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進展しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
エクソームシークエンシングを合計10家族以上めざして実施していく予定である。その後、これらのデータを用い、同一家族内の複数の患者で共有し、且つ非罹患者では存在しない極めて稀な機能性変異に限定することで、数十個程度の候補変異を同定すると期待している。一方、家族症例の膨大な変異情報が獲得できているため、この情報を基に連鎖解析が可能である。すなわち、家族症例内で高頻度の変異を選抜して、HapMapの情報からこれらの変異の内、連鎖不平衡にない変異を抽出して、連鎖解析用の変異セットを作製する。これをMERLINプログラムなどにより連鎖解析を行うことで連鎖にある遺伝子座をリストする。 また、プログラムpVAAST により、アミノ酸置換および頻度情報などを基に尤度比検定し、疾患候補遺伝子をランキングする。これと同時に、Polyphen2, SIFT, PhyloP, LRT, MutationTaster, GERP++ などにより、その変異の遺伝子に対する有害度を推定する。これらの情報を総合的に判断することで候補遺伝子をリストするとともに、同一遺伝子上に家族を超えて候補となる変異を優先的に選抜する。さらにリストされた遺伝子の機能的ネットワーク解析を行い、どのようなパスウェイ上にある遺伝子の変異であるのかを調査する。 さらに、ここまでの解析により、摂食障害の候補原因遺伝子は数十個まで絞り込まれていると期待される。もしこれらの遺伝子が真の原因遺伝子であるならば、弧発症例患者においても、同じ遺伝子群上に、集団中で稀な機能的変異が集積していると想定される。そこで、候補とした遺伝子に対して、弧発症例ならびにコントロール全検体を対象に実施する。最終的にこの解析をもって、複数の摂食障害原因遺伝子が遺伝学的に同定できると期待している。
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Causes of Carryover |
今年度は学会報告を行わなかったことと、家族症例のエクソーム解析にかかる費用が当初見込みより少なかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いてより多くの家族症例のエクソーム解析を実施する。
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