2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K09289
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
武藤 弘行 自治医科大学, 医学部, 教授 (50322392)
|
Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | Sox9 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌は死亡原因として死因の第2位である。分化型胃癌はH. pyloriの感染によって起こる腸上皮化生を基盤にして発生する。しかしH. pylori除菌後にも胃癌の発生がみられる。われわれは分化型胃癌の前癌病変である腸上皮化生粘膜を発生するCdx2トランスジェニックマウス(Cdx2 Tgマウス)から分化型胃癌が発生することを報告してきた。Cdx2 Tgマウスの腸上皮化生粘膜ではWntシグナル下流に位置するSox9が発現していることも明らかにした。ヒトの腸上皮化生と分化型胃癌においてもSox9が発現していることを報告してきた。また、ヒトの十二指腸腺腫と腺癌おいても高発現していることを明らかにした。今回はSox9が胃癌の発生においてどのような役割を演じているのかを明らかにすることを目的とした。そこでSox9を胃粘膜に特異的発現するトランスジェニックマウスの作製に成功した。既に作製に成功したSox9 Tgマウスを使用して分化型胃癌の発生におけるSox9の役割を明らかにすることを目的に研究を進めている。 胃癌の前癌病変である腸上皮化生粘膜にSox9が発現しており、このSox9を胃粘膜に特異的に発現させたトランスジェニックマウスを作製した。このSox9 Tgマウスの胃粘膜は著明に肥厚していることが確認された。Sox9 TgマウスとCdx2 Tgマウスの交配を行いダブルトランスジェニックマウスを作成して胃癌の発癌課程におけるCdx2とSox9の相互関与を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. Sox9トランスジェニックマウスの胃粘膜の肥厚の解析 すでにSox9トランスジェニックマウスの胃粘膜が正常胃粘膜に比較して著しく肥厚していることが明らかになった。一方Cdx2トランスジェニックマウスの腸上皮化生粘膜でもSox9が発現しており、このSox9の発現部位はPCNA陽性であった。これらの実験結果からSox9による胃粘膜の肥厚の増殖のメカニズムをさらに明らかにする。 2. Sox9によるH+/K+ ATPaseの発現の抑制のメカニズムの解明 Sox9トランスジェニックマウスにおいても、Cdx2トランスジェニックマウスにおいても壁細胞が消失していた。胃内のpHは7.0であり酸分泌が消失していた。このことはSox9の発現により壁細胞が消失したことを意味する。H+K+ATPaseの発現低下をH+K+ATPaseのプロモーターを用いてLuciferase assayで解析している。 3. Cdx2トランスジェニックマウスとの交配を行い、Sox9とCdx2のダブルトランスジェニックマウスを作製する。 Sox9の胃癌発癌の役割を検討するためにCdx2トランスジェニックマウスとの交配を行った。出来上がったダブルトランスジェニックマウスの解析を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 間質と発癌との関係の解明 腸上皮化生粘膜において、腺管を取り巻く線維芽細胞が存在する。正常腸管の腺管周囲を取り巻く線維芽細胞では炎症性サイトカインは発現していない。しかし、腸上皮化生粘膜の腺管では炎症性サイトカインが発現しており、特に発癌と関連するCox2の発現があることを報告してきた。そこでこのCox2をはじめとした炎症性サイトカインの発現がCdx2によるものであるかSox9によるものであるのかを各トランスジェニックマウスを用いて明らかにする。同時に非ステロイド性抗炎症薬による発癌抑制効果を検討する。 2. Cdx2トランスジェニックマウスとの交配を行い、Sox9とCdx2のダブルトランスジェニックマウスを作製する。 Sox9の胃癌発癌における役割を明らかにするために、既に腸上皮化生粘膜から分化型胃癌の発生が確認されているCdx2トランスジェニックマウスと今回作製に成功したSox9トランスジェニックマウスとの交配を行う。得られたダブルトランスジェニックマウス、Cdx2トランスジェニックマウス、Sox9トランスジェニックマウスの胃粘膜に発現しているmicroRNAを網羅的に解析し、microRNAの発現と胃癌との関係を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
研究の効率化を図るため人件費を計上していました。当該研究室で研究に当たってきた研究補助員が途中で産休を取ったため今年度は計上した人件費を全部使用しなかった。今年度の残った人件費は次年度に復職する研究補助員の人件費として使用する予定である。 物品費に関しては、既に研究室にある消耗品も使用したため今年度は全部使用せずに研究を遂行することができました。既に消耗品がなくなったので今年度の残った物品費を次年度に使用し研究を遂行していく予定です。 研究は順調に進んでおり、上記の理由の欄に記入したとおり、物品費・人件費ともに今後の研究に使用する予定です。
|