2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病によるO-GlcNAc修飾の増加が胃及び大腸癌発症に与える影響の検討
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16K09296
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Research Institution | Osaka Medical College |
Principal Investigator |
樋口 和秀 大阪医科大学, 医学部, 教授 (20218697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝日 通雄 大阪医科大学, 医学部, 教授 (10397614)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | O-GlcNAc修飾 / 糖尿病 / 癌 / FOXM1 / GSK3β |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、糖尿病と癌罹患リスクとの関連が取りざたされているが、その関連性の詳細は不明である。糖鎖はタンパク質の主要な翻訳後修飾分子の一つであり、様々なタンパク質の機能を制御している。そのなかで、細胞質や核内で起こるO-GlcNAc修飾が糖尿病で増加することからその糖鎖に注目して研究を進めている。胃癌、大腸癌等と糖尿病で増加するO-GlcNAc修飾との関わりを検討した。 大腸癌については、大腸癌の化学発癌モデルであるDMH/DSSモデルを用い、野生型とOgtーTgの発癌状況を比較検討した。その結果、OgtーTgでは消化管上皮において優位に癌化した腫瘍形成の数が減少した。そのメカニズムを追究し、炎症のマスター遺伝子であるNF-κBのO-GlcNAc修飾が増加することにより、リン酸化が起こりにくくなり、活性化しないため、発癌に絡む炎症が抑えられ、発癌しにくくなったと考えられた。(Hirata et al J Clin Biochem Nutr.in press)。 胃癌においても、MKN45という胃癌細胞株を用いて、FOX-M1という胃癌発症、増殖に関わっていると言われている転写因子に注目して研究を行った。グルコース添加培地で細胞を処理すると、FOX-M1のO-GlcNAc修飾と発現が亢進した。O-GlcNAc修飾がFOX-M1の発現に影響すると考え研究を進めた結果、O-GlcNAc修飾がFOX-M1の転写を亢進しているのではなく、分解を抑制していることが分かった。その中でGSK3βがO-GlcNAc修飾を受け、FOXM1の分解を促進していることを見出した(Inoue et al BBRC).現在、種々の癌関連遺伝子にも注目し、O-GlcNAc修飾による影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病は多くの癌種の発症、増悪因子になっている。糖尿病で増加すると言われているO-GlcNAc修飾、癌関連転写因子FOXM1を通して糖尿病と癌の関連性が少しずつ分かってきた。糖尿病における癌の発症についてはO-GlcNAc修飾が発症要因になっているという確証を得ていないが、増殖についてはFOXM1の安定化を通してO-GlcNAc修飾との関連性が分かってきた。してO-GlcNAc修飾によるFOXM1の安定化のメカニズムをさらに詳細に研究していく予定である。当初の予定より進んでいない部分もあるが、最終年度ではFOXM1の分解に関わるユビキチンリガーゼなどを中心に解析を進めていく。全体として順調に進んでいると考えられるが、全貌をあきらかにするにはさらに一層の努力が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
O-GlcNAc修飾がどのように癌関連転写因子FOXM1の安定性に関わっているかをさらに追及していく。 FOXM1の安定性の関わっている分子はTGF3βだけではなく、ユビキチンリガーゼなど別の因子も考えられる。もしそれらの活性がO-GlcNAc修飾により影響されているのであれば一側面かもしれないが、糖尿病は癌でのFOXM1の発現変化により発症、増殖に影響していると考えられることもできる。 また、O-GlcNAc修飾によるFOXM1の安定性のメカニズムをさらに追及し、糖尿病と癌の関連性をさらに深く検討していく予定で、さらには新規のFOXM1を安定化させている因子を探索し、癌治療の新規ターゲットを模索する。
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Causes of Carryover |
研究はおおむね順調であるが、あと一年あるということでマイナスにならないように心掛けた。そのため、やや余剰が出たら、次年度は最終年度でもあり、途中でゼロになっても研究を進めるようにし、年度内に目標が達成できるように努める。
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Research Products
(6 results)