2016 Fiscal Year Research-status Report
マウス大腸腫瘍自然発症モデルを用いた腫瘍間質活性化機構の解明と間質抑制療法の開発
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16K09312
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
北台 靖彦 県立広島大学, 人間文化学部, 教授 (10304437)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 転移 / 大腸癌転移モデル / 分子標的治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
共同研究者の檜井らは、大腸上皮特異的にAPC遺伝子を不活化することにより非浸潤性大腸腫瘍を自然発症するマウスモデルの作成に成功した。最近、同グループはAPCに加え、さらにKRASやTGFb receptor II遺伝子に異常を加えることにより、浸潤能を持つ大腸腫瘍発生モデルの作成に成功した。本年度はこれら3種類の腫瘍組織の特徴について免疫組織学的手法を用い解析した。これら3群のマウスから採取した大腸癌組織を用い、免疫染色により、組織型、増殖能、間質の活性化、血管/リンパ管新生などの評価を行なった。 APC変異マウスの腫瘍は明瞭な腺管構造を示す腫瘍細胞がポリープ状に増殖したが、浸潤傾向は認めなかった。APC変異にKRAS変異が加わると、粘液下層への浸潤がみられ、またAPC変異にTGFbR2変異が加わると漿膜層にまで浸潤がみられ、著明な粘液産性能も観察された。 腫瘍間質は活性化線維芽細胞(癌関連線維芽細胞:CAF)や細胞外基質、血管、リンパ管、種々の炎症細胞などで構成されているが、それらの違いにも注目した。まずはCAFのマーカーであるαSMAと細胞外基質である1型コラーゲンについて検討した。各マウス腫瘍におけるCAFの量や細胞外基質の量を定量化したところ、APC変異マウスの腫瘍よりもKRASやTGFBR2の変異が加わったマウスにおいてCAFや細胞外基質が多かった。次に、血管新生とリンパ管新生に関して、抗CD31抗体と抗LYVE-1抗体を用いて血管密度(MVD)、リンパ管密度(LVD)を計算したところ、KRASやTGFBRllの変異が加わったマウスにおいてMVDやLVDが高いことが判明した。今後は間質形成に重要な役割をもつTGF-B/RやPDGFB/Rの発現を蛍光免疫染色で検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、実験手技が安定しているため結果は得られている。おおむね予想した結果が得られており、研究の方向性に関しても大きな変更はない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、大腸癌自然発症マウスモデル(CDX2P-Cre; Apc KO、CDX2P-Cre; Apc KO + mt KRAS KI mice、CDX2P-Cre; Apc KO + TGFBRII KO miceを用いて癌の発生から浸潤・転移に至る過程を詳細に観察し、血管数やリンパ管数、CAFを含めた間質反応の定量化、間質反応誘導増殖因子、サイトカインの検索、ペリサイトの形態変化などを評価する。 大腸癌組織におけるheterogeneityの形成過程を病理組織学的に詳細に検討する。これまで間質反応の評価はヘマトキシリン・エオジン染色にて客観的に評価されていたが、我々は免疫染色手技を用いてCAFをaSMAで、ECM産生をcollagen Iで、血管新生・リンパ管内皮細胞をVEGF-A、lyve1で、ペリサイトをデスミンで評価し、画像解析ソフトにて定量化する。 また、癌細胞におけるPDGF, TGF-b, fibroblast growth factor (FGF)-2, insulin like growth factor (IGF)-2, hepatocyte growth factor (HGF)など間質形成に関与する増殖因子やサイトカインの発現をmRNAレベル(real-time PCR)と蛋白レベル(免疫染色)で評価する。 これまでの我々のマウス同所移植モデルの研究において、骨髄由来の間葉系幹細胞が大腸癌間質形成に寄与することをヒト大腸癌同所移植マウスでの動物実験で明らかとしているが、この知見を大腸癌自然発症モデルでも証明したい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額(繰越額)は4,058円と少額である。年度内の実験試薬などの購入には不足しており、次年度に繰り越すことにより、必要とする試薬の購入に充てることとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
抗マウスp53モノクロナール抗体購入予定
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