2017 Fiscal Year Research-status Report
腸内細菌・発酵産物による制御性T細胞表面結合TGF-β発現誘導の研究
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16K09315
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中村 和彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (00274449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊原 栄吉 九州大学, 大学病院, 助教 (80612390)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 制御性T細胞 / 酪酸 / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
酪酸の制御性T細胞(regulatory T cell; Treg)誘導能とTreg細胞表面TGF-β誘導能を検討するために、正常マウスに難消化性食物繊維・酪酸含有餌(酪酸投与群)、難消化性食物繊維含有・酪酸非含有餌(コントロール群)を4週間給餌し、脾臓・腸管粘膜CD4+ T細胞中のTreg割合をフローサイトメトリーで解析した。脾臓CD4+ T細胞中Treg(CD25+Foxp3+分画)の割合は、コントロール群8.11%、酪酸投与群8.99%と酪酸投与で軽度の増加を認めたが、Treg細胞表面TGF-β発現は両群間で差を認めなかった。腸管粘膜CD4+ T細胞ではTregの割合はコントロール群10.5%、酪酸投与群で10.6%と差を認めず、Treg細胞表面TGF-β発現も両群間で差を認めなかった。 次に、酪酸投与群で認められた脾臓CD4+ T細胞中Treg割合の増加に関して更に検討するため、通常の餌、難消化性食物繊維含有・酪酸非含有餌、難消化性食物繊維・酪酸含有餌を4週間給餌し、脾臓CD4+ T細胞中Treg割合を解析したところ、それぞれ6.54%、9%、11.5%であり、酪酸のみでなく難消化性食物繊維にもTreg誘導能がある事が示された。 更に酪酸投与による大腸炎抑制作用の有無を検討した。正常マウスに難消化性食物繊維・酪酸含有餌(酪酸投与群)、難消化性食物繊維含有・酪酸非含有餌(コントロール群)を4週間給餌し、その後1週間1.8% dextran sulfate sodium salt(DSS)含有水を自由飲水させ、DSS大腸炎を誘導した。酪酸投与群ではコントロール群と比較して、より高度の体重減少を来し、大腸炎により大腸の長さが短縮していた。両群間で腸管粘膜Treg上の細胞表面TGF-β発現に明らかな差は認められなかった。酪酸投与による明らかな大腸炎抑制作用は認めなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
酪酸投与により腸管粘膜CD4+ T細胞中の制御性T細胞(Treg)割合が増加し、腸管炎症を抑制する作用が期待されていたが、脾臓CD4+ T細胞中Treg割合が増加するものの、大腸粘膜CD4+ T細胞では認めず、明らかな大腸炎抑制作用も見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
大腸粘膜Tregを誘導できるように酪酸含有食餌の酪酸濃度を増加させ、実験を行う。また、酪酸投与によりむしろDSS大腸炎が増悪した機序を検討し、大腸炎を抑制する方策がないか検討する。DSS大腸炎は化学的大腸炎であり、このモデルでは大腸炎抑制作用が認められない可能性もある。他の実験大腸炎モデルを用いて、大腸炎抑制作用を認めないか検討する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が630円生じた理由は、630円で購入できる適当な物品等がなかったため、次年度の助成金と合わせて使用したほうがより有効に使用できると判断したためであり、主として物品購入にあてる計画である。
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