2016 Fiscal Year Research-status Report
インドール含有青黛生薬の炎症制御機序解明および大腸癌抑制効果の検証
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16K09326
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
長沼 誠 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (00265810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金井 隆典 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40245478)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / 大腸癌 / Aryl Hydrocarbon受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
生薬青黛の主成分の1つであるインジゴはAryl Hydrocarbon受容体(AhR)のリガンドと考えられ、様々な免疫学的薬理作用が報告されている。関節炎モデルでは既に炎症抑制作用が知られているが、AhRはILC3を介して炎症性T細胞の抑制効果を発揮し、作用機序に腸内細菌叢の関与も確認されていることから、インジゴの腸炎抑制作用も大いに期待しうる。これまで我々は探索的検討において活動性潰瘍性大腸炎患者に対して1日2gの投与により83%の症例で臨床的有効性を有し、内視鏡的治癒が得られた症例も存在することを確認してきたが、本研究では潰瘍性大腸炎に対する青黛の有用性に関する従来と異なった免疫学的機序の解明および腸内細菌叢に及ぼす作用について新たな視点で検討するとともに、インドール含有した青黛による炎症を母地とした大腸癌抑制効果についても明らかにすることを目的に研究を行っている。 平成28年度は5週齢B6マウスに、3週間給餌(生黛群、通常群)したのちにDSSを自由飲水させ腸炎の発症を検討し、体重及び、DAIにおいて生黛投与群が有意に腸炎を抑制しており生黛に炎症抑制効果が認められることが証明され、腸管LMPCにおけるIL-6およびTNFαが容量依存性に抑制することを明らかにしてきた。一方でIL-22産生は軽度亢進しているものの、IL-10産生には変化は認められなかった。また青黛の大腸癌抑制に関しては、現在タモキシン腹腔内投与、後2%DSS腸炎を2-5サイクル施行した際の腸炎活動度および大腸癌発現頻度について検討しており、約50%のマウスで炎症を母地とした大腸癌が発生していることを確認しており、高容量の青黛により、マウス大腸癌の縮小が確認された。また本研究を開始するに至った先行研究(青黛の有効機序や臨床上の治療効果)の内容の一部をJ Gastroenterologyに掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在青黛による腸炎モデルの免疫学的機序解明や大腸癌抑制効果については実験が終了している。腸炎抑制における腸内細菌の関与に関する研究は現在ヒトおよびマウスモデルにて検体採取が終了し、現在腸内細菌叢プロファイリングの変化を16S rRNA系統解析法解析を行っている。また大腸癌抑制効果の機序に関する研究は今年度より開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)青黛による腸炎抑制効果における腸内細菌叢の関与の検討について:潰瘍性大腸炎、クローン病患者の青黛治療前、治療開始後2週目、およびの糞便を採取し腸内細菌叢の変化を16S rRNA系統解析法(YIF-SC8週目)により評価し、治療効果例と非効果例の腸内細菌叢の相違について明らかにする。青黛投与前後の糞便を採取し無菌マウスに移植することによりヒト糞便化マウスを作製する。移植後2週間後、ヒト糞便が移植されたマウスにDSS投与による腸炎誘導を行ない、マウス腸炎の重症度を解析する。治療前後の腸炎重症度、治療開始8週後の有効性と無効例由来糞便を無菌マウスに移植し両マウスにおける腸内細菌叢を網羅的に解析し、両者の腸炎重症度を比較する。 2) 青黛による慢性炎症を母地とした大腸癌抑制効果の検討について:青黛自由摂取群およびAhRリガンド(陽性コントロール)を上記大腸癌モデル(2コース、5コース)に対して投与を行い炎症抑制効果と大腸癌発生抑制効果の有無について検討する。また青黛、AhRリガンドの大腸癌発生予防効果について検討するために、タモキシン投与前、DSS投与前まで2-4週間青黛服用させた場合の腸管重症度と大腸癌発生頻度を検討する。 3)抗腫瘍効果からみた青黛内有効成分の抽出及び至適投与量の検討について:生黛成分のうち、含有率の高いindol, I3C に着目し、各々を経口投与し、急性腸炎モデル(DSSモデル)、および慢性腸炎モデル(CD45RBhighT細胞移入モデル)にて比較検討を行う。さらにsitosterol、trypathin, Anthranilic acid, indole-3-aldehyde, Betulinにおいても同様にDSS腸炎抑制か可能であるか検討する。
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Causes of Carryover |
現在施行している動物実験が28年度から29年度にかけて継続して行われており、サイトカイン産生測定のための抗体購入を平成28年度の残金と29年度分で賄う予定のため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の残金と平成29年度分の予算と合わせてELISAキットを購入予定である。
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Research Products
(1 results)