2017 Fiscal Year Research-status Report
小腸粘膜防御因子DAOの腸内細菌と宿主による制御機構の解明
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16K09327
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笹部 潤平 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (10398612)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | D-アミノ酸 / 腸内細菌叢 / D-アミノ酸酸化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、小腸のD-アミノ酸代謝の鍵となるD-アミノ酸酸化酵素(DAO)の発現調節機構を明らかにするとともに、DAOの宿主粘膜免疫への寄与について明らかにすることが目的である。 昨年度までに、DAOの発現調節は細菌成分が最初の引き金となることを明らかにし、また宿主内ではMyD88やRIPK2を介さない所謂一般的なパターン認識機構を介さない機構で誘導が起こっていることを明らかにした。 本年度は、DAOは2つの方法で宿主免疫に影響を及ぼすことを明らかにしてきた。1.腸内細菌制御を通してT細胞依存的に宿主の獲得免疫に作用すること、2.腸内細菌制御とは独立して、T細胞非依存的にDAOによる代謝物を介して宿主の獲得免疫に作用すること、である。これらのことは、DAO欠損マウスをT細胞受容体beta, deltaの二重欠損マウスと交配させ、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスを作成することで達成した。T細胞受容体beta, delta二重欠損マウスと、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスの腸管免疫細胞の表現型比較を行ったところ、DAO欠損マウスで認めた獲得免疫異常の表現型の90%は、T細胞受容体beta,delta/DAO三重欠損マウスで消失したものの、10%の表現型はT細胞受容体非依存的であることが明らかとなった。10%の表現型は、DAO代謝物が未感作のB細胞に直接作用して認めたものと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目で生理的なDAOの発現制御メカニズムを探索し、2年目でDAOの宿主粘膜免疫における役割をT細胞依存的メカニズム・非依存的メカニズムについて検討した。 当初の研究計画では、DAOの発現調節機構の解明を主眼に研究を進めてきたが、宿主粘膜免疫におけるDAOの不可欠な寄与とその機構を明らかにすることができた点で、細菌誘導性のある宿主酵素の調節から機能的側面まで踏み込んで研究を進めることができており、当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明らかにしたDAOによる粘膜免疫調節機構の中で、T細胞非依存的な作用について検討する。 DAOによる細菌代謝物を基質候補分子から探索し、分子同定ができれば非T細胞群に与える影響をマイクロアレイを用いて網羅的に解析する。 この解析から得られる分子の挙動が個体レベルでも確認できるかどうかをT細胞受容体欠損DAO欠損マウスを用いて検討する。
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Causes of Carryover |
消耗品の節約によって、次年度使用額が生じた。 次年度の動物飼育費に利用する予定である。
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Research Products
(6 results)