2016 Fiscal Year Research-status Report
組織線維化に寄与する架橋修飾因子の網羅的解析および線維化抑制剤の開発
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16K09353
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
辰川 英樹 名古屋大学, 創薬科学研究科, 助教 (10565253)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トランスグルタミナーゼ / タンパク質架橋化酵素 / 基質探索 / 抗線維化薬 / 肝線維化 / 肝硬変 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝線維症の病態進展に伴うタンパク質架橋形成の役割の解明を目指し、肝線維化動物モデルを用いて、平成28年度は以下の2点の研究課題を遂行した。 (1)線維化肝の組織抽出液とビオチン標識したTGaseアイソザイム特異的な基質ペプチドとを反応させ、モノアビジン結合ビーズによるアフィニティー精製によりタンパク質を分画した後、質量分析を用いて基質タンパク質の網羅的同定を行った。得られた基質タンパク質のうち、サイトケラチン8および18に着目し、これらの標的基質の生化学的解析のために組換えタンパク質を取得した。 (2)組織線維化抑制剤として有用な創薬シーズの創出を行うため、トランスグルタミナーゼの新規活性阻害剤における抗線維化作用の評価を行った。マウス線維化モデルでの評価を行ったところ、既存の競合活性阻害剤よりも低濃度で有意な抗線維化作用を示すことが認められた。さらに生化学的な解析から、トランスグルタミナーゼのファミリーにおいて、TG2に対して有意に阻害効果を示すものの、他のアイソザイムに関しても活性抑制効果を見せた。また、抗線維化作用を持つ国内既承認薬であるピルフェニドンの作用標的探索について、28年度は20種類以上もの類縁体化合物を作製・評価した構造活性相関解析により、ピルフェニドンの線維化抑制活性に影響しない置換基を決定し、標的因子同定のための化合物のプローブ化を行った。さらにこれを用いて、予備段階ではあるものの標的タンパク質の同定にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載した28年度の目的や目標とする成果に見合った実験を遂行し、結果を得ているため
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Strategy for Future Research Activity |
トランスグルタミナーゼアイソザイム特異的に架橋された基質タンパク質の同定法として、当初は従来の方法およびiTRAQ(比較定量解析)による定量解析を行う予定であったが、従来の優位差が顕著な場合にのみ同定可能な方法で十分に候補タンパク質が得られたため、iTRAQを用いた同定手法は進めず、先行して他の研究を進めた。また、この過程で候補タンパク質であったALDH2がコントロールのサンプルでも同定されたため、新規基質タンパク質の候補からは除外することにした。
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Causes of Carryover |
今後の研究の推進方策に記載の理由により、実験遂行の流れを少し変更したため、28年度の研究費使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
質量分析に基づく比較定量解析のために次年度使用する予定であるが、他方法で十分な成果が得られた場合には、全体の研究計画遂行のために必要な装置・消耗品に使用する。
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