2017 Fiscal Year Research-status Report
レチノイドによる新たな発現制御メカニズムを介した肝癌抑制作用の解明
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16K09359
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
土谷 博之 鳥取大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00403402)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / レチノイド / TFPI2 / RARα / MAFB / MAFF |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、昨年度見出したtissue factor protease inhibitor protein 2 (TFPI2) の遺伝子発現に関わる転写因子retinoic acid receptor α (RARα)、musculoaponeurotic fibrosarcoma (MAF) B、MAFFが、癌細胞の浸潤能を実際に制御していることを示すため研究を行った。 まず、TFPI2と、RARα、MAFB、MAFFに対するshort hairpin (shRNA) 発現ベクターを肝癌細胞株に導入し、それぞれの遺伝子発現がノックダウン(発現抑制)された細胞を得た。これらの細胞でTFPI2の遺伝子発現量を調べたところ、RARαあるいはMAFBのノックダウンによりTFPI2の発現量は有意に低下した。一方、MAFFのノックダウンによりTFPI2の発現は有意に上昇した。続いてトランスウェルを使って癌細胞の浸潤活性を調べたところ、レチノイドによる浸潤活性抑制効果は、TFPI2、RARα、MAFBのノックダウンによって有意に阻害された。一方、MAFFのノックダウンは、ATRAとは無関係に癌細胞浸潤活性を有意に増強した。 次に、MAFBおよびMAFFの発現ベクターを作製し、肝癌細胞株に導入した。続いて薬剤選択を行い、安定的にMAFBあるいはMAFFを過剰発現する細胞株を得た。MAFBを安定的に過剰発現した細胞ではTFPI2の発現が有意に亢進し、一方、MAFFの安定発現細胞におけるTFPI2の発現は有意に抑制されていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、昨年度見出したTFPI2の転写制御に関わる因子(MAFB、MAFF)がレチノイドによる癌細胞浸潤活性に対する阻害効果にどのような影響を及ぼすのか明らかにすることを目的としていた。 実際に、MAFBを発現抑制させると、TFPI2の発現は有意に亢進し、レチノイドによる癌細胞浸潤活性阻害作用は、有意に抑制されることを示すことができた。また逆に、MAFFの発現抑制により、TFPI2の発現亢進とともに癌細胞浸潤活性の増強を示すことができた。 以上のことから、癌細胞の浸潤活性を制御するメカニズムとして、昨年度見出したAFBあるいはMAFFによるTFPI2の発現制御の重要性を明らかにすることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
レチノイドとMAFファミリーの肝癌における病態生理学的意義を解明するため、MAFBやMAFFによって発現が変化するレチノイド標的遺伝子を、網羅的解析により明らかにする。さらにこの解析によって得た遺伝子群をパスウェイ解析し、どのような経路がレチノイドとMAFファミリー転写因子によって制御されているのか明らかにする。さらに臨床検体を用いて、TFPI2やRARα、MAFB、MAFFの発現量を明らかにし、病態や予後との関連を調べる。
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