2017 Fiscal Year Research-status Report
脂肪肝炎におけるHSP110ファミリーの脂質、糖代謝制御機構の解明
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16K09368
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
山口 寛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50381950)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子シャペロン / Apg-2 / ユビキチン化 / 脂肪肝炎 / 肝癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
蛋白質の品質管理を行う分子シャペロンの異常は、細胞の恒常性維持にかかわる蛋白の機能不全を引き起こし、代謝異常、発癌、神経変性疾患の要因となる。以前から我々は、HSP70と共役して動くHSP110ファミリーに注目し、特にApg-2がヒト肝がんで高発現していることを示した。次にApg-2ノックアウトマウスが肝発癌や高脂肪食負荷による脂肪肝形成に抑制的であることを見出した。分子シャペロンが細胞死に至る予定の細胞の生存に寄与し、さらに脂質や糖代謝に影響することで慢性炎症や発癌に関与していると考えられた。以上から、脂肪肝炎の発症におけるHSP110ファミリーの役割を解明するために、蛋白の恒常性維持がもたらす糖、脂質代謝異常に注目して検討を行っている。これまでに我々は、ヒト肝がん細胞株の中で高分化肝癌由来のHuh-7やPLC/PR5、低分化肝癌由来であるHLE、Wild-typeのP53の機能を有するHepG2やHep3B、マウス肝癌細胞株Hep1-6を用いてSiRNAによるApg-2のサイレンシングを行い、細胞増殖やアポトーシス、代謝に与える影響について検討を行った。抗アポトーシス効果においてはApg-2がP53の分解と安定化に関わること、脂質代謝においてはAMPKのリン酸化を低下させることが判明した。本来、細胞内の蛋白恒常性維持に働く分子シャペロンが脂質代謝や糖代謝に影響することで、癌細胞の生存に寄与していることが示唆された。現在は、上記現象の機序を解明するために、Apg-2がターゲットとする基質蛋白の同定を行うために、Apg-2がHSP70と核酸交換因子として働くことに注目し、標的蛋白を選出し、相互関係の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト臨床検体200例を用いたApg-2の発現と臨床プロファイルのデータ抽出を終了し、統計学的解析を行っているが、その結果を踏まえてApg-2ノックアウトマウスにおいての肝内Apg-2の発現と脂質関連、線維化関連、糖代謝関連遺伝子の関係を再検討している。また、ノックアウトマウスの実験においては高脂肪食により脂肪肝モデルを作成していたが、高脂肪食高コレステロール食による脂肪肝炎モデルの作成を終了した。しかし、それらのマウスにおいて肝線維化を検討したところ、30週投与モデルにおいて脂肪肝モデルと同様に脂肪沈着の減少が見られたものの、肝線維化はコントロールマウスにおいても程度が軽度であったため、コール酸を添加したより強力な肝線維化を誘導する脂肪肝炎モデルを作成している。このモデル作成でやや予定より計画が遅れているが、それ以外の細胞株の実験は概ね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
脂肪肝炎モデルの作成を計画し、高脂肪食高コレステロール食にコール酸を添加した、いわゆる動脈硬化食に近い食事が肝線維化を強く誘導するという報告が文献的にあることから、そのモデルの作成を開始し、サンプリングを行い、解析する予定である。以上よりApg-2の脂肪肝炎および発癌に至る機序について検討を行い、論文作成を行う。また、ヒト脂肪肝炎サンプルの例数を増やし、統計学的に明確なApg-2との関連する因子を同定すること、血中のApg-2濃度と肝内のApg-2発現との関連を検討すること、肝癌サンプルの収集を行い脂肪肝由来の肝発癌と他のアルコール由来、ウイルス由来の肝癌との比較検討を行い、脂肪肝炎由来の肝癌の長期的な治療ターゲット分子の抽出を行う予定。
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Research Products
(2 results)