2016 Fiscal Year Research-status Report
肝線維化を抑制するRestorative Macrophageの誘導機序の解明
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16K09373
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
チョ ハクショウ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80570689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾城 啓輔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00383836)
海老沼 浩利 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師(非常勤) (20296560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 自然免疫 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
マウス線維化消退モデルでは、肝線維化程度は24hrの時点で頂点になり、その後線維化の消退が次第に進んでいった。48hr以降肝臓内にLy6ClowのCD11b陽性マグロファージが有意に肝臓内に集積した。驚くことに、肝臓の線維化を増悪させると言われる自然免疫TLR4のmRNA全肝臓発現量は肝線維化の消退のピークに当たる48hrに発現の最大値を認め、その後の72hr, 96hrにも24hrより2倍ほど有意に発現の増加を認めた。今までTLR4を介し肝星細胞が活性化になり、肝線維化の促進に働くように報告されてきた(Nat Med 2007)が、TLR4は肝線維化の消退期にも発現増加することから、TLR4が肝線維化の消退にも寄与するという未だに報告されていない新しい機序の存在が示唆された。 続いて、肝線維化の消退過程TLR4の細胞内下流経路を阻害するTAK-242 を用いて、肝線維化消退期の開始と思われる48hrに投与した。全肝のRT-PCRでは肝星細胞の活性化状態を示すα-SMA, Collagen 1α1, TIMP, TGF-βなど、TAK-242投与群において非投与群に比し有意に低下したにもかかわらず、投与群においてMason-Trichrome染色により肝臓線維化程度は非投与群より線維化の消退が遅延したと判明された。全肝RT-PCRでは線維化の消退に直接作用するMatrix Metalloproteinase (MMP)9, MMP12のmRNAはTAK-242投与群において非投与群に比し有意に低下した。 TAK-242投与下における肝線維化の消退遅延は肝星細胞での動きのみでは説明できず、やはり修復性マクロファージ(Restorative Macrophage)を含むMMP産生細胞におけるTLR4信号に阻害によるMMP産生促進の阻害に寄与することが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
先行実験による「高水溶性食物繊維投与によりCD11b陽性ミエロイド系免疫細胞が肝臓内に有意に多く集積する一方、肝線維化の所見は有意に軽減される」とのマウス肝線維化モデルを用いた実験結果の元、肝線維化を抑制するRestorative Macrophageの表現型、サイトカイン産生能、肝星細胞をはじめとする肝臓内non-parenchymal cellとのクロストークや線維分解能等を検討することを目標とした。 今までの実験では、TLR4はMMP産生の促進を介し線維化の消退を制御する可能性がある。また、責任細胞は原仮設にある修復性マクロファージ(Restorative Macrophage)である可能性が高い。今後、機能的評価を含む研究を推進していきたい。 肝線維化消退過程における肝障害・肝再生に対する影響も考えられる。TAK-242投与によるTRL4の細胞内経路の抑制に伴うALTの上昇やTLR4の肝線維化消退期における肝障害や肝再生への正の影響が予想される。この仮説のもとに肝の炎症性再生モデルでの検討も必要である。一方、肝再生において制御性T細胞やTGF-βを介するシグナルの役割が不明であり、その究明は今後の応用課題としてさらなる研究開拓に繋げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス肝線維化消退モデルにおいて、責任細胞の同定に務めていきたい。今までの知見ではTLR4発現細胞は非実質細胞である肝細胞外基質を産生する肝星細胞や肝内ミエロイド系細胞、類洞内皮細胞、樹状細胞など;実質細胞である肝細胞、胆管上皮細胞などがある。マウス肝線維化消退モデル・TAK-242によるTLR4細胞内経路の阻害モデルにおいて、これらの細胞を単離し、TLR4刺激前後の表現型変化を確認する。 TLR4欠損マウスにて表現型の確認をする。また、肝星細胞以外のTLR4発現細胞の欠損状態での表現型変化を確認する。また、TLR4の細胞内経路にTrifを介する肝線維化消退への影響を確認する。肝線維化消退モデルでのTLR4 ligandの由来を確認する。肝線維化消退の際の腸管除菌や腸管浸透圧上昇のモデルを用いて、腸管内PAMPs/DAMPsなどTLR4 ligandの肝線維化消退における役割を解明する。一方、肝内細胞外基質の一部であるhyaluronan、肝細胞由来HMGB1など内因性TLR4 ligandについても精査する。また、胆汁酸や胆汁内の肝臓に由来する内因性TLR4が腸管上皮透過性を改変する可能性も念頭に精査を進める。 同定した責任細胞の表現型を確認し、冒頭の高食物繊維食餌モデルにて、肝臓内に集積するCD11b陽性ミエロイド系細胞の表現型を究明する。 ヒト肝線維化消退モデルであるC型慢性肝炎DAA治療前後において、TLR4経路の変化や回復性マクロファージの存在を確認する。
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Research Products
(2 results)