2017 Fiscal Year Research-status Report
肝線維化を抑制するRestorative Macrophageの誘導機序の解明
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16K09373
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
チョ ハクショウ 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (80570689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾城 啓輔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00383836)
海老沼 浩利 国際医療福祉大学, 医学部, 主任教授 (20296560)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝線維化 / 自然免疫 / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
全世界で肝硬変に伴う死亡者数は年間約100万人にのぼり、肝硬変に関連する肝発癌などにより更に100万人の死亡が推計される。我々は腸肝相関に着目し、肝線維化を抑制する修復性マクロファージ(Restorative Macrophage)の表現型を明らかにすることを目的とした。肝線維化消退モデルとして、マウス(B6)に四塩化炭素(10%~25%, in olive oil)の反復腹腔内注射し肝硬変の状態にさせ、そこから投与を中断し実験を行った。既報のように肝線維化程度は24hrの時点で頂点になり、その後線維化の消退が次第に進んでいった。驚くことに、肝臓の線維化を増悪させると言われる自然免疫TLR4のmRNA全肝臓発現量は肝線維化の消退のピークに当たる48hrに発現の最大値を認め、その後の72hr, 96hrにも24hrより2倍ほど有意に発現の増加を認めた。今までTLR4を介し肝星細胞が活性化になり、肝線維化の促進に働くように報告されてきた(Nat Med 2007)が、TLR4は肝線維化の消退期にも発現増加することから、TLR4が肝線維化の消退にも寄与するという未だに報告されていない新しい機序の存在が示唆された。続いて、消退過程TLR4の細胞内下流経路を阻害するTAK-242投与モデルおよびMyD88缺損マウスを用いた実験では、TLR4の細胞内径路であるTRAM-Trifがマクロファージにおける修復性phenotypeへの誘導に関与すると予想した。同マウスモデルでは肝臓内Foxp-3+制御性T細胞の上昇を認めた。治療前後の血清肝線維化指標の低下を示すC型慢性肝炎に対するinterferon-free DAA治療前後の比較においても、末梢血中の制御性T細胞頻度の有意な増加を認めたことを報告し(PLoS One 2017)、ヒトへtranslationalの意義を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝線維化消退マウスモデルではTLR4の全肝mRNA発現の変化とphenotypeの関連を確認した。その後、TLR4のLigand、受容体、細胞内径路を含めて、其々のレベルで肝線維化消退に関与する細胞の同定に注目しながら、肝細胞とマクロファージとのクロストークが修復性phenotypeの獲得に寄与する可能性を見い出し、実験を進めているところである。また、肝線維化消退過程における肝障害・肝再生に対する影響を検討する。TAK-242投与によるTRL4の細胞内経路の抑制に伴うALTの上昇やTLR4の肝線維化消退期における肝障害や肝再生への正の影響が予想される。この仮説のもとに肝の炎症性再生モデルでの検討も必要である。一方、肝再生において制御性T細胞やTGF-βを介するシグナルの役割が不明であり、その究明は今後の応用課題としてさらなる研究開拓に繋げていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの実験では、肝線維化の消退過程において、TLR4の下流シグナルはMMP産生の促進とする回復性phenotypeの獲得に寄与し線維化の消退を制御する可能性がある。また、肝細胞とマクロファージとのクロストークが修復性マクロファージ(Restorative Macrophage)の誘導に関連する可能性が高い。今後、以下の点において研究を推進していきたい。 (1) TLR4下流細胞内シグナルの変化に務めていきたい。TAK-242によるTLR4細胞内経路の阻害モデルにおいて、単離した責任細胞のTLR4刺激前後の表現型変化を確認する。 (2) TLR4欠損マウスにて表現型の確認をする。また、MyD88欠損マウスとの比較や骨髄移殖のモデルを用いてTLR4の細胞内経路にTrifを介する肝線維化消退への影響を確認する。 (3) 肝線維化消退モデルでのTLR4 ligandの由来を確認する。肝線維化消退の際の腸管除菌や腸管粘膜透過性の上昇モデルを用いて、腸管内PAMPs/DAMPsなどTLR4 ligandの肝線維化消退における役割を解明する。一方、肝内細胞外基質の一部であるhyaluronan、肝細胞由来HMGB1など内因性TLR4 ligandについても精査する。また、胆汁酸や胆汁内の肝臓に由来する内因性TLR4が腸管上皮透過性を改変する可能性も念頭に精査を進める。 (4) 細胞単離ex vivoの培養操作や移入モデルにて、同定した責任細胞のin vivoの作用機序を確認する。 (5) ヒト肝線維化消退モデルであるC型慢性肝炎DAA治療前後において、TLR4経路の変化や回復性マクロファージの存在を確認する。
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Research Products
(1 results)