2017 Fiscal Year Research-status Report
メチローム・クロモゾーム解析に基づく肝癌転移関連分子の同定と臨床応用
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16K09382
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
西田 直生志 近畿大学, 医学部, 准教授 (60281755)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肝細胞癌 / 分子分類 / 転移再発 / 分子スコア / アジュバント療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、肝癌の主要な遺伝子変化に基づいた分類による転移再発予測の可能性を検討した。1. 125例の肝癌を用い、TP53、CTNNB1、TERT promoterの変異を解析、8種のpromoterメチル化を定量し、promoter高メチル化群を分類、ゲノムワイド脱メチル化状態を3種の反復配列のメチル化レベルにより、ゲノム脱メチル化群を分類した。microsatellite解析により、fractional allelic loss (FAL)スコアを算定し、染色体不安定群と安定群に分類した。結果を基に、対応分析とクラスター解析により肝癌を亜分類し、進行癌の特徴を有するsubgroupの特徴を抽出した。2. 肝癌移植例を用い、1.で抽出した遺伝子変化のスコアを基に、移植後の転移再発が予測できるかを検証した。3. The Cancer Genome Atlas (TCGA)より367例の肝癌データを参照し、遺伝子変異、DNAメチル化、染色体コピー数、及び肝癌切除根治性と無再発生存期間が確認可能な168例を対象として、解析を行った。1. の解析により、肝癌が4つのサブグループに分類され、転移との関連が知られている背景を持つsubgroupの特徴として、TP53変異あり、CTNNB1変異なし、ゲノムワイド脱メチル化あり、染色体不安定あり、の4種の分子リスクが抽出された。2. 肝移植例の肝癌で分子リスク>3をaggressive molecular typeと定義した。この typeは有意に再発のリスクであった(p = 0.0090; log-rank test)。3. TCGAより抽出した肝癌初発切除性でも、このtypeは肝癌再発と有意に関連した(p = 0.0076)。肝癌のcommonな遺伝子変化を検索することにより再発リスク群を同定でき、その群はアジュバントの検討余地がある
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
125例の肝癌、非癌部の切除と凍結標本を用い、体細胞遺伝子変異(TP53, CNTTB1, TERT promoter)をdirect sequenceで解析し、がん抑制遺伝子(TSG)プロモーター異常メチル化レベル(APC, CDKN2A, RASSF1A, HIC-1, GSTP1, RUNX3, SOCS1, PRDM2)、ゲノムワイド脱メチル化レベル(Alu, LINE1,Sat2) をCOBRA, MethyLight法で定量、さらにゲノムワイドの染色体コピー数変化をABI PRISM Linkage Mapping Set Ver. 2にて定量した。それらの各パラメーターを、体細胞遺伝子変異の有無、TSGプロモーター高メチル化、ゲノムワイド脱メチル化レベルの有無(階層クラスター解析により判定)、染色体不安定性の有無(染色体コピー数変化を基にしたFALスコアで判定)にカテゴリー化し、対応分析とクラスター解析により、肝癌をsubgroupに分類し、各subgroupの腫瘍の臨床病理学的特徴と遺伝子変化と特徴を検討した。上記の結果を基に、スコアリングシステムを構築し、25例の肝癌移植例の遺伝子解析を行い、移植後の肝癌再発が予測しうるかを検討した。さらにvalidationとして、公共データベース(TCGA)より、376例の肝癌切除例のexsome sequencing, HM450によるmethylome, Affymetrix SNP6による染色体コピー数解析結果をダウンロードし、治癒切除後の無再発期間(PFS)を検討した。これらの結果より、構築した分子スコアリングの転移予測には有意な結果が得られ、目的とする転移予測と、その関連遺伝子の絞り込みに進展が見られたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
肝癌肝移植例の癌組織を用い、術後に肝外転移で再発した例、および肝癌肝移植後で4年以上の無再発例のゲノム、エピゲノム変化を包括的に検討する。さらに、肝癌の肝移植例で、術後に肝外転移で再発した例の染色体変化を検討し、転移を生じた肝癌での共通変化領域を求める。同様の解析を4年以上の無再発の肝癌肝移植例で行ない、転移を生じた肝癌にユニークな異常染色体領域を求める。また、肝癌の治癒切除検体を用い、上記で選択した異常染色体領域、および異常メチル化を示す遺伝子の内で、治癒切除後の早期再発と相関する変化をさらに絞り込む。これにより、肝癌根治治療後の転移再発と関連する遺伝子変化を絞り込む。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサー用のパネル作成キットの納入が遅れたために生じたものであり、次年度の4月での支出を予定している。研究計画に変更が必要なものではない。
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