2016 Fiscal Year Research-status Report
B型慢性肝炎とHLA class II遺伝子との関連の包括的理解を目指す研究
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16K09387
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
西田 奈央 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 上級研究員 (50456109)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | GWAS / HLA / HBV |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人B型肝炎患者1,033例、日本人健常対象者942例のゲノムワイドSNPタイピングデータを用いてGWASを実施した。加えて、ゲノムワイドSNPタイピングデータを用いてHLA imputationを実施し、HLAアリルの推定を実施した。HLA関連解析の結果、3つのB型慢性肝炎になりにくいHLAタイプ(DPB1*02:01, DPB1*04:02, DRB1*13:02-DQB1*06:04)と2つのB型慢性肝炎になりやすいHLAタイプ(DPB1*05:01, DRB1*15:02-DQB1*06:01)が存在することを明らかとした(Nishida et al. Sci. Rep. 2016)。 上記の5つのHLAタイプの有無を説明変数に入れたHLA層別化GWASを実施したところ、ゲノムワイド有意水準に達する新たな遺伝子領域を同定することはできなかったものの、複数の候補遺伝子領域を検出した。現在も継続して、日本全国の共同研究施設からB型肝炎患者由来の生体試料(ゲノムDNA、血清)を収集しており、今後Replication解析を実施する予定である。 B型肝炎患者24症例を用いて、Illumina TruSight HLA Sequencing Panel(ver2試薬)を用いたHLAタイピング精度の評価を行った。HLAタイピングをAssignソフトウェア、Omixonソフトウェアで比較をしたところ、PCR-Luminex法を用いてタイピングした結果をReferenceとした際の不一致数は、Assighソフトウェアが4、Omixonソフトウェアが11であった。上記のB型肝炎になりやすいHLAタイプを有する症例の中で高齢にも関わらず慢性肝炎を発症しない症例の選択が完了しており、来年度にHLA seqを実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
B型慢性肝炎に関連するHLA class II遺伝子の解析を進めることで、慢性肝炎になりやすいHLAタイプとなりにくいHLAタイプを同定することができた。また、B型慢性肝炎患者群を肝発がんの有無で2群に分けたGWASを実施したところ、HLA class I遺伝子の関連を新たに同定した(論文投稿中)。 肝発がんになりにくいHLAタイプを有するにもかかわらず、肝がんを発症した症例を選択することが可能となった。これまでに日本全国から収集したB型肝炎患者1,033例の中で、肝発がんになりにくいHLAタイプをホモで有するにもかかわらず肝がんを発症した11症例を選択した。同じHLAタイプを有する肝発がんのない症例11例と共に、HBV-DNA塩基配列を比較したところ、肝発がん症例に共通する特徴的なアミノ酸配列を同定した(投稿論文準備中)。
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Strategy for Future Research Activity |
【ホスト因子の探索】HBワクチン接種症例を対象としたGWASを実施する。これまでに約1,200例を超えるHBワクチン症例の収集が完了しており、GWASおよびHLA関連解析を実施する。また、B型慢性肝炎になりやすいHLAタイプを有する症例の中で、高齢になっても慢性肝炎を発症しない症例を対象として、HLA seqを実施し、対照群との塩基配列比較を実施することにより、B型慢性肝炎に関連する新たなホスト因子の同定を目指す。 これまでに取得したゲノムワイドSNPタイピングデータを用いて、SNPや構造多型のImputaitonを実施する技術が確立した場合には、SNPや構造多型のImputationを実施して、新たなホスト因子探索を試みる。 加えて、国際メタ解析の準備を進めており、新たなホスト因子が検出された場合には、追加の日本人症例を用いたReplication解析を実施する。 【ウイルス因子の探索】日本全国の共同研究施設から生体試料の収集を継続しており、収集した症例を対象として、ゲノムワイドSNP解析およびHLAタイピングを進める。肝発がんに関連するHLAタイプを有する症例を選択して、HBV-DNA塩基配列決定作業を進める。アミノ酸配列に置換して関連解析を実施するパイプラインが既に完成しており、取得したHBV-DNA配列から肝発癌に関連する新たなHBV-DNA変異の同定を目指す。
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