2017 Fiscal Year Research-status Report
オートファジーに立脚した急性膵炎発症・進展の分子機構の解析
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16K09389
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
大西 洋英 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (00313023)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
眞嶋 浩聡 自治医科大学, 医学部, 教授 (10261869)
三浦 光一 自治医科大学, 医学部, 講師 (90375238)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー / rab7 / 膵臓 / 外分泌 / 酵素顆粒 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究にて、膵腺房細胞に発現する低分子量GTP結合タンパク質rab7が、オート-ファジー機構を介して急性膵炎の発症・進展に対して防御的に機能していることを膵臓特異的rab7koマウスを用いて明らかにした。その研究過程において、急性膵炎発症にて重要な役割を果たしている膵腺房細胞の酵素顆粒内に存在する消化酵素前駆体であるトリプシノーゲンのトリプシンへの活性化が、rab7発現の有無と深く関連しているとの知見を得た。これより、膵腺房細胞に発現するrab7が酵素顆粒機能と深く関連している可能性が示唆された。よってオートファジー機構に立脚した急性膵炎の発症機序の検討として、rab7の酵素顆粒機能に対する生理的機能を解明することも必要と考え、その検討を平成29年度に行った。野生型ならびに膵臓特異的rab7koマウスの膵臓を用いた抗アミラーゼ抗体と抗rab7抗体による免疫蛍光二重染色では、野生型マウスの膵腺房細胞にてアミラーゼとrab7が酵素顆粒域に共染色され、膵臓特異的rab7koマウスではrab7のシグナルは認められなかった。これより、膵腺房細胞においてrab7は酵素顆粒域に局在することが明らかとなった。さらに、野生型ならびに膵臓特異的rab7koマウスの膵臓よりpercoll gradient法にて精製した酵素顆粒膜を用いたrab7のWestern blot でも、rab7のシグナルは野生型マウス酵素顆粒膜に認められ、膵臓特異的rab7koマウス酵素顆粒膜には認められなかった。これらより、rab7は膵腺房細胞の顆粒膜上に局在することがあきらかとなった。これまで各種細胞にてrab7はエンドゾームなどに局在するとされてきたが、今回の我々の「膵腺房細胞酵素顆粒上にrab7が局在する」とのデータは、rab7が分泌小胞に局在する事を示した初めての知見と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究はオートファジーに立脚した急性膵炎の発症と進展分子機構の解析を目的としている。平成28年度には低分子量GTP結合蛋白質rab7が、オートファジー機構を介して急性膵炎の発症・進展に対して防御的に機能していることを明らかにした。更には平成29年度はそのrab7の急性膵炎に対する防御機能の詳細な解析の一環として、急性膵炎発症・進展に深く関わる膵腺房細胞内膜小胞器官の一つである酵素顆粒上にrab7が局在することを見いだした。この知見はrab7の急性膵炎に対する防御機能が、酵素顆粒の制御に関わる事により発揮されていることを示唆すると考えられる。更には、膵腺房細胞酵素顆粒上にrab7が局在するとのデータは、rab7が分泌小胞に局在する事を示した初めての知見と考えられる。以上から、本研究は当初の計画以上に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、膵腺房細胞酵素顆粒上に局在することが明らかとなったrab7の機能を解析する。酵素顆粒上に局在することから、rab7は膵腺房細胞の調節性外分泌や酵素顆粒の形成ならびに成熟過程などに関与している可能性が考えられ、それらの可能性を各々検討する。調節性外分泌に関しては、野生型ならびに膵臓特異的rab7koマウスの膵から調製した遊離腺房を用いて検討する。また、酵素顆粒の形成や成熟過程への関与は、電子顕微鏡を用いて野生型ならびに膵臓特異的rab7koマウスの膵を比較観察することにより検討する。一方で、絶食時など膵外分泌が抑制された状態では、細胞障害能を有する蛋白分解酵素を多量に包含する酵素顆粒は、腺房細胞みずからを傷害しないように、つまりは絶食時などに膵炎が生じないように、オートファジーを介して酵素顆粒をクリアランスする機構が存在することが既報にて報告されている。よって、rab7がこの酵素顆粒のクリアランス機構に関与しているか否かも野生型ならびに膵臓特異的rab7koマウスを用いて、in vivo実験にて検討してゆく。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究が当初の計画よりも順調に遂行されたため、平成29年度は研究課題に沿ったさらなる詳細な研究の発展的推進を開始した。平成29年度はその推進のための基礎データを集積したところである。平成29年度はその基礎データの集積に研究費を使用したが、当初の研究費使用予定額までの研究費を要することなく、必要な基礎データの集積が完了した。平成30年度はその基礎データをもとに、詳細な実験と解析を予定しており、その実験・解析に今回生じた「次年度使用額」の研究費と平成30年度分として請求した助成金を合計した研究費が必要と考える。よって、平成30年度の研究遂行には、今回生じた「次年度使用額」の研究費と平成30年度分として請求した助成金を合計した研究費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)