2016 Fiscal Year Research-status Report
Notch/Hes1シグナルをターゲットとした膵癌の新規治療開発
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16K09395
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
児玉 裕三 京都大学, 医学研究科, 講師 (80378687)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膵臓 / 膵癌 / 前癌病変 / Hes1 |
Outline of Annual Research Achievements |
A.ヒト膵癌におけるNotch/Hes1シグナルの発現および機能解析 膵癌は多数の遺伝子異常の蓄積により、化生性変化(ADM)、前癌病変(PanIN)を経て、多段階に浸潤癌へ至る。本研究ではヒト膵癌切除標本、あるいはヒト膵癌細胞株を用い、Hes1を中心とした種々のNotchシグナルの構成因子の発現、および機能解析を行った。ヒト膵癌切除標本におけるNotch/Hes1シグナルの発現の検討では、ADM-PanIN-浸潤癌の進行に伴いHes1蛋白質の発現が増強することが免疫染色により確認された。また、ヒト膵癌細胞株におけるNotch/Hes1シグナルの発現の検討では、各種の膵癌細胞株においてHes1 mRNAが高発現していることがqPCRにより確認された。既にヒト膵癌細胞株を用いたマウスXenograftモデルを確立しており、今後はHes1遺伝子をノックアウトした細胞株を用いてHes1の機能解析解析を行なう。 B.マウス膵癌前癌病変~膵癌の形成における Notch/Hes1シグナルの機能解析 Ela1-CreERT2マウスと、Cre誘導性に変異KRAS遺伝子を発現するマウスとの交配(Ela1-CreERT2;KRASG12Dマウス)、さらにはCre誘導性に変異TP53遺伝子を発現するマウスとの交配(Ela1-CreERT2;KRASG12D;TP53R172H マウス)により、 成体マウスにおいてタモキシフェン誘導的に膵前癌病変mPanIN、あるいは膵癌を形成するモデルを作成した。本モデルとHes1 flox マウスとの交配により、変異遺伝子が導入された膵細胞において Hes1 遺伝子をノックアウトしたところ、mPanINあるいは膵癌の形成がほぼ完全に抑制されることが観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A.ヒト膵癌におけるNotch/Hes1シグナルの発現および機能解析:ヒト膵癌切除標本におけるNotch/Hes1シグナルの発現の検討では、ヒト膵癌切除標本の正常膵組織、ADM、PanIN、および浸潤癌部におけるHes1の発現について、免疫組織化学染色による検討を行うことができた。また、ヒト膵癌細胞株におけるNotch/Hes1シグナルの発現の検討においていも、各種のヒト膵癌細胞株(CFPAC-1, PK-9, AsPC-1, Panc-1, MIA Paca2, BxPC3など)におけるHes1 mRNA発現の定量的な発現検討が可能であった。さらに、ヒト膵癌細胞株を用いたマウスXenograftモデルの確立にも成功し、in vivo における評価系も整った。 B.マウス膵癌前癌病変~膵癌の形成における Notch/Hes1シグナルの機能解析:遺伝子改変動物を用いた膵前癌病変あるいは膵癌を形成する動物モデルを確立することができた。さらに、これらにHes1 floxマウスを交配し、Hes1遺伝子のノックアウトによる効果について評価可能な実験系を確立することができた。これらの実験系の解析の結果、Hes1遺伝子のノックアウトが正常な膵細胞には影響を与えずに、膵前癌病変・膵癌の形成をほぼ完全に抑制するという極めて興味深い結果が確認された。 以上より、本研究は当初の計画に沿って、おおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト膵癌におけるNotch/Hes1シグナルの発現および機能解析においては、現在CRISPR/Casシステムを用いて作成中であるHes1遺伝子ノックアウト膵癌株を樹立し、増殖能・遊走能・浸潤能についてin vitro実験系にて比較検討する。マウス膵癌前癌病変~膵癌の形成における Notch/Hes1シグナルの機能解析においては、これまでに得られた「変異KRAS遺伝子が導入された膵細胞において Hes1 遺伝子をノックアウトすると前癌病変~膵癌の形成が抑制される」との結果について、そのメカニズムの解析を行なう。マウス膵細胞をレポーター遺伝子によってマーキングし、そのlineageを追うことにより、変異KRAS遺伝子が導入されたADMが、Hes1遺伝子のノックアウトによりどのような運命をたどるのかについて解析する。 さらにこれまでの結果をふまえ、Hes1をターゲットとした新規膵癌治療法の探索を行う。我々はこれまでに、京都大学物質-細胞統合システム拠点 上杉志成教授との共同研究により数種の新規Hes1阻害剤を得ている。本研究では、これらの新規Hes1阻害剤が、各種ヒト膵癌細胞株(CFPAC-1, PK-9, AsPC-1, Panc-1, MIA Paca2, BxPC3など)の増殖能・浸潤能・遊走能に与える栄養について、MTT細胞増殖assay・invasion assay・wound healing assayによりin vitroの検討を行う。また、これまでに確立したヒト膵癌細胞株を用いたマウスXenograftモデル、あるいは遺伝子改変による膵癌モデルを用い、新規Hes1阻害剤がマウス正常組織、あるいは膵癌(腫瘍)の形成・浸潤・転移についての検討を行う。
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Research Products
(2 results)
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[Presentation] Biphasic Role of Hes1 in Pancreatic Development2016
Author(s)
Katsutoshi Kuriyama, Yuzo Kodama, Masahiro Shiokawa, Nobuyuki Kakiuchi, Tomoaki Matsumori, Atsushi Mima, Teruko Tomono, Yoshihiro Nishikawa, Motoyuki Tsuda, Tatsuki Ueda, Yuki Yamauchi, Yojiro Sakuma, Yuji Ota, Takahisa Maruno, Norimitsu Uza, Hiroshi Seno, Tsutomu Chiba
Organizer
American Gastroenterological Association, DDW 2016
Place of Presentation
San Diego
Year and Date
2016-05-23
Int'l Joint Research