2016 Fiscal Year Research-status Report
内視鏡側面に指のような触覚をもたらす新規圧力センサーの開発
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16K09407
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
植木 賢 鳥取大学, 医学部附属病院, 教授 (60542256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 一剛 鳥取大学, 医学部附属病院, 准教授 (10324998)
藤井 政至 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (40762258)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 内視鏡 / 圧力センサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、大腸内視鏡の検査時に、内視鏡スコープの側面にかかる圧力を検知することで、大腸組織の損傷を防止し、スコープ挿入の補助を行えるよう圧力センサーの開発を行うことである。これにより、安全な次世代内視鏡システムの開発の礎を築くことを目指す。 以前の研究において、本学は内視鏡スコープの先端に作用する圧力が検出できる先端用触覚センサーアタッチメント作製した。そこで、平成28年度は、このアタッチメントを元に、スコープの側面に装着できるようセンサーの素子構造の再設計を行った。その結果、内視鏡のアングル操作(屈曲)に影響されず、内視鏡スコープの側面の圧力を検出できるセンサー構造を見出すことができた。これをもとに、企業と共同で新しい圧力センサーを試作し、教育用の大腸モデルを用いた試験を行い、その有用性について検討した。結果として、側面のセンサーが検知した圧力は、大腸内での内視鏡スコープの状態を良く反映していることがわかった。また、このセンサーを用いることによって、大腸内視鏡検査中、常にスコープの側面に作用する圧力を監視することが可能になるため、従来の高価な透視装置の代用品として用いることができる可能性が新たに見出せた。 上記の実績を踏まえ、来年度以降は、本研究をさらに発展させることを目指す。本研究で開発されるセンサーが完成すれば、内視鏡挿入時に腸穿孔の危険を未然に察知し、フィードバックできる世界初の製品となる。これにより、医療安全に資する新たな内視鏡システムが誕生する。また、内視鏡検査で麻薬などの鎮痛剤を併用する海外の医療においても、腸穿孔を防ぐ画期的なシステムとなり、世界での活用が見込まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、大腸用内視鏡スコープの側面に装着できる圧力センサーやそのセンサーで測定した圧力データをパソコン上に表示できるソフトウェアの試作を行った。この試作圧力センサーは、スコープ先端から約120cmの範囲に装着できるようチューブ状に成形した。また、感圧エラストマーと2つの電極から構成される圧力素子を複数配置して成形した。さらに、内視鏡スコープへの簡便な装着方法を考案し、短時間でスコープの外周に装着できることを確認した。内視鏡スコープの挿入を妨げないよう、圧力センサーからの電気信号は有線で取り出した。加えて、開発したソフトウェアを用いて圧力データをリアルタイムに表示できるようにした。 試作の結果、内視鏡のアングル操作(屈曲)に影響されずに内視鏡スコープ側面の圧力が検出できるセンサー構造を見出すことができた。 教育用大腸モデルを用いて、上記の試作圧力センサーの有用性を調べる試験を行った。2名の内視鏡医が、このセンサーを装着したスコープを盲腸に到達するまで挿入し、スコープの側面に作用する圧力のデータを計測した。同時に、スコープ挿入中の大腸の形態も観察した。この実験結果から、試作した圧力センサーは大腸内において内視鏡スコープとの接触を十分検出できる感度を有し、かつ内視鏡スコープの形状とスコープ側面に作用する圧力はよく対応することがわかった。また、この開発したセンサーで検出した内視鏡スコープ側面の圧力は大腸内での内視鏡スコープの状態を良く反映していることがわかった。さらに、このセンサーを用いることによって、大腸内視鏡検査中、内視鏡スコープ側面に作用する圧力の常時監視が可能になることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床医や内視鏡技師、看護師などから臨床現場で使用することを想定した上での意見を集め、多角的なリスクの分析を行い、試作品のブラッシュアップや残留リスクの評価を行う。また、実用化に向けた取り組みも進める。 (1) 試作圧力センサーのブラッシュアップ 臨床現場での使用を想定して圧力センサーの設計仕様の絞り込みを行う。例えば、内視鏡スコープのどの位置に側面センサーを配置するのが最も効果的か、また、圧力センサーと内視鏡スコープの嵌合はどれくらいがよいか、圧力センサーの長さはどれくらいが最も使いやすいかなどである。このように、様々な観点から大腸モデルを用いた実証試験を繰り返し実施して、実用化のための設計仕様の絞り込みを行う。また、圧力の測定結果を表示するソフトウェアの改善も実施する。 (2) 動物実験による評価 新しく開発した圧力センサーを内視鏡スコープの側面に取り付け、専用に作製した治具上で、張った状態のブタ切除大腸にスコープ屈曲頂部を押し当てる。これによって、本センサーによる屈曲部での腸穿孔の域値を明らかにする。つぎに、全身麻酔下の生体ブタで、側面圧力センサーを付けた状態でブタ大腸に押し当て、実際に腸穿孔が生じるときの閾値をもとに感度を再調整する。最後に、内視鏡に側面用センサーを装着して、腸穿孔の状況を想定して試験を行う。これらの試験データをもとに、製品仕様を決定する。 (3) 事業化検討 市場ニーズ調査や製品の費用対効果の検討を繰り返し実施するとともに、本センサーを製品化する医療機器製造販売業者とのマッチングについての活動をスタートさせる。
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Causes of Carryover |
試作した内視鏡側面センサーについて、内視鏡処置具製販企業との面談のための関東出張を検討していたが、先方との日程調整が合わず、平成29年度に実施する方針となった。初年度の計画通り、内視鏡側面センサーを作成することができており、平成29年度に実施する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に、内視鏡処置具製販企業との面談のため、関東出張を行う。様々な情報を収集し、製品のリスク分析を行う予定である。
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